このリングに願いを込めて (ページ12)

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ようやく部屋に上がると、

「座るとこないんで、ベッドに座っちゃってください」

そう言いながら、すぐにエアコンをつけた。

テレビすらない、ベッドと小さなミニテーブルしかない質素な部屋。
ミニテーブルには、金色の小さな皿みたいなものが一つだけ載っていて、他には何にもない。

部屋の角には、ガムテープでしっかり封のされた段ボールが二つ、重ねられていた。

さすがに人様のベッドを椅子代わりにするのもどうかと思うから、床にあぐらをかく。

「夕ご飯、食べました？」
「あ、え、いや」

食べたと言ってしまえばよかったのに、彼の笑顔を目の当たりにすると、平然と嘘をつくことなんてできひんくて。

台所にはしきりもなく、冷蔵庫と流しを行き来してる神山くんの後ろ姿は丸見え。

しばらくすると優しい匂いがしてきて。

「喉、つらそうなんで雑炊にしました」

雑炊なんて、普段食べようとも思わへんのに。卵の優しい色が、無性に食欲をそそる。

心配してくれて、こうしてご飯まで作ってくれて。
食べないという選択肢はない。

渋々マスクを外すと、

「え…どうしたんですか？何かあったんですか⁉︎」

指が口角辺りにふれて、
綺麗な顔が近づいて、心配そうに瞳が揺れている。

「あの…」

「俺、神山くんに隠してることがあって」

マスクをテーブルに置くと、背中を伸ばす。
真正面に座ると、緊張した面持ちで、それでも俺から目を逸らさない。