夢か現か

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「ほんまにありがとう」


食べ終えて顔を上げると、視線が交わる。
その熱に浮かされないように、心の蓋をギュッと閉めて。


「大袈裟やん。たかがケーキ一個で。今度、もっとええもん奢るから」
「もう十分や。ほんまに、今までありがとう」
「…コーシロ？」
「俺、火賀が幼馴染でほんまによかった。楽しかったし、幸せやった」
「なぁ、何なん？何のこと？そんなっ、お別れみたいなん、やめや！」
「んーん、これでお別れ。幼馴染は卒業する。これからは普通の同級生」
「なんで？なんでなんっ、？なぁ！」


火賀の空気が変わった。
静かやけど、めちゃめちゃ怒ってる。


「じゃ、はっきり言うわ」

「あんなんしといて、幼馴染に戻るなんて無理やろ」

「火賀は戻れると思ってた？ありえへんやろ。どんだけアホなん？」


わかってて、もっと怒らせようと言葉を選ぶ。
火賀の顔は、みるみる曇ってく。


「それは、ごめん…」
「やからさぁ、そういうとこやん。謝られて俺がどんな惨めな気持ちになるかわかる？お前の態度から滲み出とんねん。申し訳なさと後悔が！」


淡々と話すつもりが、どうしても感情が昂ってしまう。
火賀を幻滅させるにはちょうどええかも知れへん、なんて頭の片隅にはどこか冷静な自分もいて。


「やから、丸ごとなかったことにしたいねん。そういうことやから」


テーブルの上を片付ける。
話はこれで終わり、そう告げるように立ち上がった。

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