記憶 (ページ44)

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汗にまみれ、欲にまみれ、砂にまみれ、

花火なんてもう終わってしまって、
静かな海辺で、響くのは二人の荒い息遣いだけ。
砂浜で二人、大の字になって、濃紺の星空を眺めてる。

「ごめん」
「なんで。俺が言うたやん」
「けど…やり過ぎました」
「でも、幸せやった」

「花火は来年、やな」
「一年後か…ま、いっか」

当たり前に未来を約束できる幸せ。
俺にとっては、めちゃくちゃ大きな幸せ。

「またここにする？」
「うん。そしたらキスしながら見れるし」
「花火見る気ないやろ」
「それは、神ちゃん次第やな」
「ほいだら浴衣はやめとこ」
「わかった！キスまでしかしないから！そこんとこどーかっ！」

縋って泣きつくと、ケラケラ笑う。
俺がしげだとわかってから、この笑い方してなかったから。
片思いしてた頃の、そのままの神ちゃん。
大好きだった、無邪気なその顔。

「二人で笑ってよ？」

「悲しい記憶は消えへんけど、」
「消えたら困る」

「やって、しげとの時間は宝物やもん」

「思い出したら時々悲しくなるけど、でも大丈夫。大毅さん、これからはずっとおってくれるんやろ？」

「過去は過去。未来は未来。俺にとってはどっちも大事なの」

「やから」

「一年後もここで約束して？」

「一生、一緒におるって」

穏やかな笑みに吸い込まれるように、もう一度キスをした。
海辺には、波の音だけが響いていた。

fin.