記憶 (ページ41)

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「ごめんな？置いてって」
「ええよ。また出会えたから」

「もうどっか行かんでな？」

不安に揺れる瞳。
謝っても慰めても、いくら抱きしめても消えない不安を植えつけてしまったのは、俺の選択。

「神ちゃ…っ、」

抱きしめると、砂浜に倒れ込んで、
首元に顔をうずめると、あの時と変わらない神ちゃんの匂いがして。

それでも背中をゆっくりと摩ってくれる、大きな手。

涙は、浴衣に吸い込まれてく。

「なぁ」

シャツを握る手に、ぎゅっと力が込もる。

「抱いて」

神ちゃんの不安を完全になくすのは、無理なんかもしれへん。
やから俺は、ずっとずーっと、愛を注ぎ続けることしかできない。

神ちゃんがお腹いっぱいやって言うまで。
言うてもやめてやらんけど。

「俺も、抱きたかった」

「ほんまはな、あの頃から何回も抱きたかった。想像してた」

合わせにかけた指を引くと、白い胸元が覗く。
砂浜よりずっとずっと白い肌。

心臓の辺りに、強く吸い付くと、印をつける。

「もっとつけて」

帯を解いて、浴衣が砂浜にはらりと落ちる。

指先に、

足の甲に、

首筋に、

腹に、腰に、

赤い花を咲かせてく。

消えないように、強く強く。

「し、げ…」

ポロポロと流れ落ちる涙、指で拭っても足りないくらい溢れてきて、

頬を伝って砂浜にしみをつくる。

「ずっと一緒やから」

「絶対置いてかへんから」

「一生、一緒やで？」

受け取ってくれなくてもいい。
ただただ、気持ちのままに愛を囁き続ける。