記憶 (ページ40)

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追憶ページ40

赤side

あの頃より少し下にある瞳。

熱気と、お囃子と騒めきと、

幸せそうなのに、ちょっと苦しそうな神ちゃん。

たぶん俺も、おんなじ顔してる。

幸せで幸せ、

めちゃくちゃ世界一幸せなのに、

どこかに悲しみのかけらが残ってて、ふとした瞬間にちくちくと胸を刺す。

あの日。

会いたくて会いたくて、それでとも会えなくて。
バイバイを覚悟したあの日。

行かれへんとわかっててオカンに聞いた花火のよく見える穴場。
神ちゃんを連れて行きたかったあの場所に、どうしても二人で行きたかった。

「誰もおらへんのな！」

繋いだ手はそのまま。

はしゃいで笑って。
無理しなくていいのに。

「なぁ、花火終わったら戻る？また屋台あるやろ。約束のやつ、全部買ったるからな」
「まだ花火も始まってへんのに。大毅さん、せっかちすぎ」

りんご飴も追加、
なんて。
笑ってくれるんなら、なんでもいくつでも買ったるし。

手を繋いで、砂浜に座る。

「夜の海ってさ、なんか怖いよな」

たぶん、神ちゃんの目には、最後のデートで連れてきてくれたあの日の海の景色。

「あの海もこんな感じやったん？」
「…今度行く？」
「…うん」

「一緒に見たい、神ちゃんが見たもの、全部俺にも見せて」

置いてかれた方の気持ちなんて、考えたことなかった。やから知りたい。神ちゃんの幸せも後悔も、悲しみも。
全部二人で抱えたい。