記憶 (ページ37)

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「ほえ〜、自分でできるもんなんやなぁ」
「昔ばあちゃんに教えてもらってん」

若干緩い気のする襟はご愛嬌。

「いい！めっちゃいい！」

「神ちゃん」

急に変わった声色に、襟から視線を上げると、

おでこにふれる体温。

「やっぱ、好き」

「あの頃から、ずーっと」

体温が混ざり合って、呼応するように唇を寄せて、

ピチャ、

ピチャ、

静かな部屋に、水音が響く。

「似合う」

「綺麗…神ちゃん、めちゃくちゃ綺麗…」

キスして見つめ合って、
耳を擽る甘い声に、体温が上がる。

「神ちゃんの浴衣見るの、夢やった」
「大袈裟。笑」
「りんご飴食べる神ちゃん見るのも」

「花火、並んで見るの」
「大毅くん…？」

「夢みたいやぁ」

漆黒の瞳に幕が張って、
瞬きと同時に、ぽたりと雫が落ちた。

会えなかった時間、

寂しいとか、会いたいとか、寂しいとか。
俺は自分の気持ちばっかに支配されてたんやなって。
しげの気持ちを考えたことはあったやろうか。

いつも穏やかやったしげ。
自分のせいで、って自分のこと責めてたん？
病気のこと、恨んだりしたん？
起き上がれない体で、布団の中で、そんな幸せな夏祭り、夢見てたん？