記憶 (ページ36)

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「夏祭り行こか」

「やり直し、な？」
「いらん」

「やり直しなんていらん」

浴衣買ってもらって、夏祭り指折り待ってたあの時間も、
しげと会えなかった寂しさも、
渡せなかった誕生日プレゼントも、
一度も袖を通すことなく実家に置いてきた浴衣も。
どの記憶も、俺の中ではつらくても大切なもの。しげを好きだった俺の気持ちの証やもん。
上書きするなんてつもりはない。

渡せなかったプレゼントは、結局捨てることもできず、クローゼットのダンボールの一番下。
思い出と一緒に押し込めてきた。

いくら隠しても、押し込めても、
俺の中の孤独も寂しい気持ちも、消えてくれなかった。
向き合うことも消すこともできない。

過去は過去、
人の気持ちってそんな割り切れへんのやって思い知ったこの2年間。
けど、結局過去は過去やねん。
今からつくるのは、“未来”

大毅さんとの“未来”

「でも…夏祭りは行きたい」
「へへ。初デートやん！」

「俺とデートしてくれる？」
そう言って大毅さんは笑った。