記憶 (ページ33)

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「ただいま、神ちゃん」
「…な…んで、？」

しげの答えなんて聞く余裕もなく、ひたすらしがみついて泣きじゃくる。

どれくらい経ったのか…

「やり直したくて」

大毅さん…しげが言った。

「幸せ、やり直したくて」

「二人の幸せ、」
「なんで…」

「なんで言うてくれへんの、⁉︎」

「言うてくれたら、俺…こんな…っ、」
「やって、ズルいやん！そんなん前の俺に負けた気がして」

「自分の力で好きになって欲しいやん？」
「人の気も知らんと…アホ！ほんま…あほぉ、…っ、」

やけど、真っ直ぐなしげらしいな、なんて。

けど、あの曲弾いたん、わざとやろ？
そんなんセコ技やん。
そんなんなくても、俺、絶対もうすぐ気づけてたし。

「もっかいちゃんと、神ちゃんに好きになってほしかった」
「もう好きやし」
「ごめん、苦しませて…悩ませて」

「今度は…一緒の幸せがええ」

抱きしめる腕に、力が込もる。

「ごめん、俺、間違ってた」
「間違いやないよ。あの時の幸せは、きっと、アレやった」

「俺のこと、考えてくれてたん、わかってた」

「けど、やっぱり、もっとつらい未来が待ってたとしても、できるだけ長く一緒にいたかった。それは俺のワガママやけど」
「言うて？ワがママ。いっぱい聞きたい。神ちゃんのワガママ…神ちゃんの気持ち」
「大毅さん…でええの？」

「うん」
「大毅さん…」

「ずっと一緒？」

「ずっと」
「嫌言うても、もう離れへん」
「じゃあ一生」

「一生そばにおって」

二人一緒の幸せが、
今、始まる。

「神ちゃん、」

「ただいま」

fin.