記憶 (ページ25)

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おばちゃんの車で病院から帰ると、そのまま二人でしげの部屋に向かう。
おばちゃんも、俺たちのことわかってて、迎えいれてくれる。

「神ちゃん」

「俺…そろそろ、終わろうと思う」

ベッドに横になると、口を開いたしげ。
一瞬、意味がわからなかった。

あまりにいつも通りの、穏やかな顔して言うから、

聞き間違えなんちゃうかなって。

「嘘…やんなぁ？」
「…もう苦しいねん、」

「疲れてもうた」

「いやや…」

「なぁ、冗談きついって」

「俺のこと、置いてくん？」

「俺のこと、好きていうたん、しげやんかっ、」

「そんなんっ、」
「ごめんな？神ちゃん。もう決めてん」

「もう痛いの、いややねん、苦しいの、いややねん…」

「楽になりたい…」

苦しいっていうしげを止めることなんてできなくて。

もう、お別れの日は決まっていた。
日にちも時間も。
それが、しげとの最後の時間。

タイムリミット。

それでも日常は何も変わらない。
俺がどんなに一人泣いても、時間は刻々とすぎていく。
泣くのなんて時間の無駄やってわかってる。
けど、
カウントダウンが迫ってくるにつれて、
それでも変わらないしげを見ていると、まだ嘘じゃないかなんて淡い期待を捨てきれなくて。
俺が覚悟決められてへんなんて、ほんまはあかんのやけど。