記憶 (ページ24)

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打ち明けてくれてから一ヶ月、
入院を勧められたしげは、それでも学校に通い続けた。
車椅子に座るしげは、みるみる弱っていく。

見ることが増えた、後ろ姿。
隣に並んで歩けてた幸せを、今さら実感してる。

いくら悔やんでも、
それでも俺にできることは変わらない。
一緒にいること。

できるだけたくさんの笑顔を。
できるだけたくさんの時間を。

なんて言いつつ、
ほんまは俺が一緒にいたいから、いるだけやけど。

他の何よりも他の誰よりも、しげとの時間を優先した。

陸上よりも勉強よりも、
何よりもしげが大事やから。

しげといたい、ただそれだけ。

しげが休む日は、週に一度の病院の日。
授業が終わってそのまま、しげを迎えに行く。
内緒でハマちゃんが送ってくれるから、すぐにしげに会える。

「おつかれ」
「神ちゃん、ごめんなぁこんなとこまで」
「俺が会いたくて来てるの」

肩を叩かれて振り向くと、ハマちゃんが人差し指を口に当てていた。
帰るな？って手を振った。

「神ちゃん、どうしたん？おいでや」
「うん」
「オカン、まだかなぁ」
「そろそろちゃう？」

待合室の脇、寄り添うように座る。

しげの病気は、
ついに、しげの目も奪い始めた。

しげから見える世界は、どんななんやろう。

同じ世界、もう見られへんのやろうか…

俺が泣きそうなの、しげには見えてない。
よかった…
よくないけど。
涙なんか見せたくないもん。

しげは、

「楽しそうな神ちゃんが好き」

そう言ってくれるから。

笑ってたい。

しげの好きな俺でいたい。

最期の時まで。