記憶 (ページ22)

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「救われた」

「現実は現実。受け止めな、な？」

「けど、俺の過去も現実やんって」

「やから、なかったことにしたないなって」

「これ、見たくなくてしまい込んでてんけど、神ちゃんと付き合い始めてから出してきてん」

すごくしげらしいな、なんて。
まだ付き合いは浅いけど、俺の大好きなしげ。
しんどいやろうに、いろいろあるやろうに、真っ直ぐなところは決して変わらない。

しげはそれから、長い時間かけて今までのこと、病気のこと、いろいろ話してくれた。

治療法が見つかっていない病気やということ。

進行を緩める薬の効きが悪くなっていろんな薬を試してること。

それで最近、なかなか体調が優れないということ。

進行すれば、手足が動かなくなること。
そのうち目も口も、動かなくなること。

自分のことなのに、淡々と。

「ずっと言われへんでごめんな、？」

「思ったより早くて」

「もうちょい大丈夫やと思っててんけどなぁ、」

あとどれくらい、一緒におれるん？

俺は、隣におってええの？

訊きたいのに、言葉にならない。

代わりに出てきたのは、

「俺、しげのこと、好き」

ただそれだけ。

「あ、りがと」

しげが笑った。

今は、それでええ。

ベッドに膝をつくと、
覆い被さるように唇を重ねた。