記憶 (ページ18)

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「しげ、今日」
「ごめん！用事あって」

最近付き合い悪いなって。
陸部の休み、週一しかないのに、先々週から会われへんくなって。

学校おる間、ずっと一緒やし、
土日は会ってるし。

不安とか不満はない。
けど…

「あんな、」

たぶん俺、変な顔してたんやと思う。
しげが重い口を開いた。

「バイトしてん、」

眉毛下げてるしげ。

「え、でも」

校則では禁止されてるはず。

「知り合いやから断られへんくて」

「期間限定やから、」

「ハマちゃんには黙っとってくれる？」
「そんなん…言わへんけど」
「大丈夫、もうすぐ終わるはずやから」

その翌週は会えたし、

バイトは減ったのか終わったのか、
なんとなくはっきり訊かれへんまんま、フェードアウト。

夏休みも陸部の合間をぬって、会える日はしげと会って、ずっとしげと過ごして。

何するわけやない。

ただ一緒にいるだけ。

喋って、

楽器さわって、

目が合ったら、時々キスをして。

幸せな幸せな夏が終わろうとしている。

俺が溺れたら困るって
海は行かれへんまんま、もうクラゲが出てくる時期になってもうたけど。

来週は夏祭り。
その日は、しげの誕生日でもある。

オカンに頼んで買ってもらった浴衣と、こっそり用意した誕生日プレゼント。部屋に1人でいても、それだけで幸せ。

8月26日を楽しみに、

壁にかけた浴衣を眺める幸せな時間。