記憶 (ページ16)

今日:27 hit、昨日:34 hit、合計:46,023 hit

9＊ページ16

「お邪魔しまーす」

持ち運べるくらいのキーボードを手に、うちにやってきたしげ。
ギター弾く言うたら、しげもピアノ弾く言うて。
そこから音楽の話で盛り上がって、セッションしよーって約束して。

ベッドにあぐらかいてキーボードにふれる。
俺はベッドに腰掛けて、チューニング。

「何弾く？」
「俺、最近弾いてるのあるんやけど」

しげの口から出たのは、国民的ロックバンドのバラード。
バンドスコアから、コードを拾って、
しげの引いたメロディを口ずさむ。

〜♪

体揺らして、ほんまに楽しそうに弾くしげ。

声を合わせる。
2人の声が、一つになる。
不思議な感覚。

「神ちゃん、ええやん！めっちゃええ！」
「やばっ、めっちゃ楽しい！な？」

最後の音を出した途端、目が合う。
キラッキラの瞳。

それから、お互いが知ってる曲を弾いては歌い、
あっという間に時間がすぎる。

「神ちゃんの声、めっちゃ好き」

「なんやろう、沁みるわ、めっちゃここに」

胸をトントン叩いて、にかぁって笑う。

「神ちゃん…好き」

手が伸びてきて、肘を掴む。

顔が近づいてきて、

ふわり、

微かに唇がふれた。

「へへ、ファーストキスもらい」

「しげも、初めて、よな？」
「うん。神ちゃんだけ」

西陽に染まったしげの顔は、幸せそうな笑みを浮かべた。