Colorful stories 11（W.短編集）

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しげがどうして怒ってしまったのか、わからないまま。
学校でも避けるような態度をとられて1週間が経った。
もちろん、しげん家にも行ってない。

彼と話せないだけで、学校生活は色を失う。
前に戻っただけなのに。
せやけど、彼との楽しい時間を知ってしまったから。

このままなのはどうしても嫌や。
勇気を振り絞って、あの時以来初めて、しげに声をかける。


「なぁ、しげ」


ピクリと肩を震わせて、それでも頑なに振り返らない。


「なぁ、俺なんかした？なんで怒ってんのか教えてくれへん？悪いことしたなら、ちゃんと謝りたいねん。でも全然わからへんくて…」


必死に縋り付く。
別れたくない彼女みたいで、自分で自分がおかしくなる。


「怒ってへん、」
「怒ってるやん！」


「…今から、うち来て」


目も合わせないまま、それだけ言うて、俺のカバンまで持って歩き出した。


懸命に、しげの背中を追いかける。
俺は、置いてかれないようにするので精一杯。
いつもは、歩幅を合わせてくれてたんやって、今ごろになってしげの優しさに気づく。



俺をベッドに座らせると、自分はピアノに向き合った。


「聴かせたい曲があんねん」


スッと息を吸うと、この前と同じ曲を奏でた。
ただ、この前聴いたのとは明らかに違う。
比べ物にならないほど、情緒的に弾き上げる。
いつもの弾むようなのやなくて、苦しくて切ない思いの詰まった音。

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