Colorful stories 11（W.短編集）

笑ってくれたら ページ34

「重岡さん、神山さん、終わりでーす。次、中間さん、濱田さん、桐山さんお願いしまーす」


テーブルでくっちゃべってたお兄ちゃん組が、動き出す。
ハマちゃんなんて、まだ口にお菓子入ってるし。


なんて目の前の景色ぼんやり見ながら、
左手のぬくもりに目を落とす。


「いつまで手ぇ繋いでるん」
「役得！へへっ」
「暑い」
「ええやん、ちょっとくらい」

ちっさい唇とんがらせて、手をブンブン振る。

「神ちゃん、今日も好きやなぁ」
「当たり前や！毎日大好き！」

かわええ、言いながら淳太と照史は目尻を下げる。


はぁ…
毎日毎日食らわされる告白にも慣れて、もはやメンバーもスタッフさんもネタやと思ってるんちゃう？
嫌なわけやない。けど、断るんも、エネルギー使うんやで？
疲労を最小限で抑える方法「スルー」を獲得した俺は、今日も華麗にスルーをかまし続ける。


「神山くーん」
「え！ええのありました？」


スタッフさんの手招きに、猛ダッシュ。
汗ばんでた左手は、一気に冷えた。

スタッフさんと、画面を覗き込むふわふわ金髪。
その様子を、カメラマンさんすら笑って見てる。なんやねん、この現場…


「この重岡くん、好きっしょ？」
「ヤバっ！これ必須！え、このツーショットもお願いします！」

スタッフさんのグーサイン。
この後神ちゃんのスマホに写真が送られてくるらしい。最近の撮影後の風物詩。



「しげちゃん、おつかれさ〜ん」


肩がぽんと叩かれる。


「今日も冷たいなぁ」
「もう飽きたわ」
「じゃあそろそろ返事したったら？」

したした。
なんなら初めて“好き”って言われた時にちゃんとした。

“ごめんな？俺、神ちゃんのこと、そういう風に見られへん”って。

それでも諦めず、てか、より一層楽しそうにぶつかってくる俺の相棒。

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