Colorful stories 11（W.短編集）

2 ページ30

「食べさしたるな？」


箸で一本だけうどんを摘むと、
ポヤポヤの瞳は焦点が合ってない。
熱に加えて寝起き。
史上最強のポヤポヤの誘惑に、今日だけは負けるわけにはいかへん！


「ええって。じぶんでたべれるから。
うつすとアカンから、しげ、ちかよらんどって？」
「え〜！俺がしたいの！ええから！はい、あーん」


強がる神ちゃんには、多少強引に。
コツは甘えること。


「きついなぁ」
「だいじょーぶ」
「大丈夫ちゃう。俺の前でまで気ぃ遣わんでや。俺、神ちゃんの恋人、やろ？」
「…ん」



ほぐしてほぐして、
がちがちの心、溶かして溶かして


普段なかなか甘えへん分も甘やかして。


まさかの“あーん”までしちゃって。





「しげ…シャワーあびたい」


こんなん言うてくれるだけで嬉しい。
俺、どんだけ神ちゃんに甘いねん。笑


「湯冷めするから、お湯張ろな？
で、あったまったらすぐ布団入ろ」
「しげ、泊まってってくれる？」
「当たり前やん！隣で寝るで？」
「…ありがと、」


神ちゃんお気に入りの入浴剤を入れて、
あっつあつの手を引く。


「気持ちい？」
「んー。きもちぃ、ありがとぉ」

半透明のパネルの向こうから聞こえる、神ちゃんの声。

「そーいえばさぁ、さっきまたグループラインに、来てたで？」
「おじじのギャグ？」
「ハマちゃんのホラー動画」
「きょーはむり」
「元気なったら、一緒に見る？」
「んー、どしよかな」


倒れたりしたらアカンし、神ちゃんが少し見える位置、
神ちゃんのシルエットを目で追う。

3→←君に浮かされて

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す