Colorful stories 11（W.短編集）

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ガチャリ

玄関が開く音が寝室まで響く。

まだ寝る時間ちゃうけど、何もする気が起きんくて。
ベッドに腰掛けてぼんやりしてた。
寝室のドアが開いて、室内の空気が久しぶりに動く感覚がした。

「ただいま、」

暗くて顔は見えへんけど、たぶん顔は赤いと思う。
いつも一杯で赤くなるから。

「……」

いつも通りの“おかえり”なんて言えなくて。

暗闇に慣れた俺の目にはよく見えてるけど、きっと神ちゃんに、俺はよく見えてないはず。


「しげ…？」
「早かったやん」


冷たい声、冷たい言い方。

「しげと…話したくて」
「今さら何の話すんの？聞いても何も言うてくれへんかったくせに。さっきのヤツに聞いてもらったらええやん」

さっきの光景を思い出すと、どんどん激しくなる口調。
驚くほどに怒りが抑えられない。
神ちゃんには弱い俺。いっつも全然強く出られへんのに。
なんなら一回も喧嘩したことも怒ったこともないくらい。


神ちゃんも固まってしまった。
けど…
怯えさせてるとわかっていても、抑えられないくらい、黒い感情が暴れ出す。


「しげ…、？」


ゆっくりと近づいて、俺のすぐ前に立ち止まる。
戸惑いながらもそっと伸ばした手、気づけば振り払ってた。


しまった、
そう思った時には、もう遅かった。


振り翳した刀は、もう下ろせない。


ぺたりと座り込んで、ボロボロと涙を流す神ちゃんを置いて、家を出た。

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