Colorful stories 11（W.短編集）

『真っ直ぐ』に愛してる ページ12

緑side



送りの車降りたら、すぐ目の前は自宅マンションのエントランス。
ありがたいよ？ありがたいけど…


今日はまだ帰りなくなかった。
まだ気持ち、切り替えられてへんのやもん。
目の赤み、ちゃんと消えたかチェックもしてへんし。

俺のことに関しては、意外にも鋭いしげ。
油断ならん。



無駄にゆっくり、鞄から鍵を取り出すと、これまたゆっくり、鍵を捻る。


エレベーターではなく、階段で。
自宅は7階。
階段で上るのは初めてかもしれない。



“運動のためにさ、たまにはな？”

“やっぱ7階はきついわ〜、間違ったわ”


そしたら、顔が赤い言い訳くらいにはできるんちゃうかなって。
ぎこちない笑顔、少しは疲れて力抜けるんちゃうかなって。







『神ちゃんへ

グループのために別れよう。
俺にとっても、神ちゃんにとっても、
一番大事な場所やから。

夢叶えるまで、
メンバーとして、
よろしくお願いします。

重岡大毅』


長年の両片思い(だったと知ったのは付き合えた後やけど)が実ったたった3か月後、しげは突然出ていった。
テーブルの上には、しげらしくない言葉足らずな置き手紙を残して。



俺らが結ばれることでの障がいについては、お互い理解しているつもりだった。
やけど、繊細なしげは俺が気づかないところでずっと悩んで考えて、グループと俺らを天秤にかけたんやろう。
わからないわけではない。俺だって…


しげなら、俺らなら大丈夫やって、心のどこかで信じてた。思い込みたかっただけなんやろうけど。
しげなら、無理やりにでも“大丈夫や”って、笑って掬い上げてくれると思ってた。


俺は結局、しげに寄りかかってたんやなって、その時初めて身に染みて思った。

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