Colorful stories 8（W.短編集）

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「かーみーちゃん♡」

小瀧の声が聞こえると、反射的にそっちを向く癖は、まだ完全には抜けてへん。


「のんちゃん、おはよ」


朝からちょっと高い、穏やかな声。

この声を聞けるだけ、俺は幸せ、
そう言い聞かせる毎日。

ソファに並ぶ2人の仲睦まじいやりとりは、聞きたくなくても聞こえてくる。


「今日はどこ行く？」
「のんちゃんが行きたいとこ、ないん？」
「俺はなぁ〜、神ちゃんの唐揚げ食べたい！」

ほら、唐揚げにしなくてよかった、最後の晩餐。
どっちにせよ、あの日を思い出さへん日なんて、ないけどな。


「今日は仕込んでへんから、また今度な？」


もう俺にはできないこと。
断ったことにホッとした反面、今度がすぐに来る不安が心を覆う。


「じゃあ、お好み焼き食べ行こ？で、帰りアイス食べようや」


神ちゃんを元気づけようと、ずっと寄り添ってくれる小瀧。
感謝はしてる。けど、正直、怖い。
一生愛すると約束したけど、俺らにはもう繋ぎ止めるカタチがない。

俺への気持ちが薄れてしまうんじゃないか…
神ちゃんが、小瀧のことを好きにならないか。


不安は膨らんでいく一方。



楽屋を後にする2人の背中を見送ると同時に、肩を叩かれる。
振り返ると、ハマちゃんが困った顔して笑ってた。

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