水色

6 ページ6

「なぁなぁ、名前何て言うん？」
「神山です」
「あだ名は？」
「神ちゃん、かな」
「おけ。神ちゃん。俺はのんちゃんて呼んで？」

「なぁ、アキト〜」

おっきな声を出すから、不織布はふわりと飛んで、床に落ちた。
実は落ちたのは3回目。4枚目はもう諦めることにした、

振り返る店長を見て、店長の名前を知った。仲ええねんな。
俺も店長のこと、“ハマちゃん”って呼んでたから、そんなもんか。


「今日神ちゃんの歓迎会な」
「お前が採用決めるんかい！」
「絶対採用。かわええもん」

店長と若いスタイリスト？アシスタント？さんとは思えない関係性に、思わず吹き出す。


「ほらー、お前が突っ走るから、モンチが笑っとるやんか」
「お前ももう専ニクつけとる時点で、のんちゃんよりだいぶやけどな」

昔もおった中世的で知的なお兄さんが、奥から顔を出してツッコんだ。
そうそう、この人、いつもツッコミで忙しそうやった。


「よろしく、神ちゃん」


そんな彼が、俺の肩にポンと手を置いて笑いかけてくれる。


「あ、ありがとうございます！よろしくお願いします！」
「やから！店長は俺やん！淳太くんまで」
「じゃ、不採用？」
「採用ですけど、何か」


こいつ、言いたかっただけやで〜

なんて2人が揶揄って店長が地団駄踏む。



あったかい、優しい雰囲気。
昔、通ってた時から、いつも元気をもらってた。

これから彼らと過ごせるという事実が、今の俺の唯一の心の支えになった。

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す