Colorful stories 7（W．短編集）

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「俺、神ちゃんのこと、好き。ずっと好きやってん」


言葉は聞こえてるのに、飲み込むのに時間がかかった。


「こんな時にずるいけど、照史のこと忘れるためでええから。やから、俺にチャンスちょうだい」




その目、その声。
しげが本気なのが伝わった。
だからこそ、頷くことなんてできひん。


「ごめん、しげ。それはできひん。そんなん言うてくれる人の気持ち、踏みにじられへん」
「それでええ言うとるやん！絶対好きて言わせてみせるから！」
「やから！そういう問題ちゃう。アカンもんはアカン」
「頑固者！」
「うるさいっ！」

失恋したばかりなのに、しげとこんなやり取りできる元気はあるらしい。それもたぶん、しげのおかげ。





正直、タイプちゃう。
だって俺のタイプ、照史やし。振り向かへんと思う。
十数年一緒におって、そういう目で見たことないし。気をもたすわけにはいかない。


「しげ、やっぱあかん。自分の機嫌は自分で取るから」


キッパリバッサリと断って、その場を離れた。

この後の仕事も無事、何事もなかったかのように終える。
きっと誰にもバレてない。いつも通りに見えてるだろう俺。
真面目やらプロフェッショナルやら言われるこの性格、かわいくないなぁって我ながら思う。





それでも家に帰ってくれば涙でも出るのかと思いきや、1人になって浮かぶのは、思いを伝えてくれたしげの顔。

そら、びっくりしたけど。
あんなまっすぐな告白、嬉しくないわけない。

気を持たせないためとは言え、言い方キツかったかも。態度も悪かったよな。
傷つけてもうた…
傷ついた顔見せなかったくせに、あの後楽屋で驚くほど静かやったしげを思い出すと、余計に胸が締め付けられる。



せめて一言、“ごめん”……
ちゃうな、“ありがとう”を伝えたくて、スマホを手に取った。

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