Colorful stories 5 （W.短編集）

2022.7.29 「で、どうしたいの？」 ページ36

「神ちゃん！このあと暇？」
「おん。別に何もないで？」
「めっちゃおしゃれなお店みっけてんけど、行かへん？」

…違和感しかない。
しげがおしゃれなお店。しかも俺を誘う？
なんか変なこと考えてんのか？
相談があるとか？
けど…
イタズラもするにも相談するにも、しげが選ぶのは悲しいことに俺やない。

喜んでええのかわからへん。
けど、そら好きな人に誘われて行かないなんて選択肢があるわけない。
二つ返事で頷いた。


後ろからは視線。
気づいとる。けど、好きて言われたわけでもないし、俺にも好きな人がいるわけで。
申し訳ないけど気づかないフリ。
しげに腕を引かれて、楽屋を出た。


久しぶりに2人で。
おしゃれ居酒屋かなんかやと思っとったんに、
連れてかれたのは、隠れ家バー。
こじんまりとしていて、他のお客さんたちも自分たちの世界。

しげがオーダーまでしてくれて、嬉しい半分複雑な気持ち半分。

なんでこんなおしゃれなバー知ってるん？
誰と来たん？
こんなスマートなしげ、俺は知らん。


そんなモヤモヤを抱えた俺の前に置かれたのは、悲しくなるほどに澄んだ緑色のカクテル。
さくらんぼまで入って、間違いなく俺好み。




「神ちゃん弱いんに、ペース速くない？アホなん？」
「うっさい。しげが悪いんじゃ」

酔いも早く回ってぐらつく頭。口元もだらしなく緩んでる自覚はある。
酔いに任せてやつ当たりしても、しげは楽しそうに笑ってる。

「俺だってたまには酔いたい時もあんねん」
「何？失恋でもした？」
「…ちゃうし…」

半分図星。
勝手に恋して勝手に失恋した気持ちになってモヤモヤしてる。

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