11 ページ34
旦那様が寄り合いで家を空ける時分、ともの部屋の前を歩き回るのが日課となっていた。
珍しく、琴の音も聞こえてこない。
ともと目を合わせたい。
ともと言葉を交わしたい。
許されるのならば、その柔らかな肌にふれたい。
気がついたら、ともの部屋の障子に手をかけていた。
「…っ、だぃ、」
中から微かに聞こえるうめき声。
異様な雰囲気に、慌てて障子を開くと、布団が真紅に染まり、ともがうずくまっていた。
「ともっ、とも!」
「だい、き、さん、」
俺の名を呼ぶと、ふわりと笑って、目を閉じた。
覆いかぶさるように腹の傷口をさらしで抑え、額の汗を拭う。すぐ目の前には、真っ赤な顔をしてうずくまっているとも。
傷が膿んだのか、熱にうなされているような荒い息遣いを繰り返し始めた。
下女の千代ちゃんにお医者さまを呼びに行かせている間にお戻りになった旦那様は、それからずっととものそばに寄り添っている。
お医者さまの処置が終わり、薬のお陰か、ともがようやっと眠りについた頃。
「大毅、何があった?」
ともに目をやったまま、旦那様は厳しい声色で聞かはった。
「気がついた時には、腹を刺されて倒れていました」
「心当たりは、」
「……」
「あるんやな?悪いようにはせんから、話しなさい」
ともが僻まれて、ひどい仕打ちを受けていたこと、
ともがそれを旦那様に心配かけないよう知られないようにしていたこと、
俺の知ることを全て、お話した。
「…わかった。しばし、ともを頼む」
それだけ言うて、旦那様は、部屋を後にされた。
516人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「WEST.」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
7129(プロフ) - 蒼乃碧さん» いつもありがとうございます!この夢、起きた時ガチで泣いてました🥲ハッピーエンド専門の私としては続きをみたいのですが…出てきてくれない😭これは、私が幸せにすべきなのか…🔥考えてみようかなぁ〜辛すぎますよね💦 (2022年10月26日 7時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - 異国…悲しすぎます(´・ω・`)続き、ありますか?無ければ、色々考えてしまいます…ハピエンになる続きを(´・ω・`) (2022年10月26日 6時) (レス) @page50 id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - 蒼乃碧さん» コメントありがとうございます!!!「くちばしとうそ」のファンでして、ありがたく継ぎ接ぎ書かせていただいてます!うっとりなんて、嬉しすぎます♡赤緑ばかりですが、もっと素敵な赤緑描きたいと思ってます!これからも読んでいただけると嬉しいです!!! (2022年6月25日 23時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - 継ぎ接ぎ、がご縁でこちらにお邪魔させて頂いてます。沢山の素敵なお話に、毎日うっとりしてます^_^ (2022年6月25日 23時) (レス) @page47 id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - にんさん» にんさん祭りですね〜笑 発想も文章も全然違うので、本当にいつも新鮮で楽しいです♪胸が泣くなんて光栄✨「儚」というタイトルは付けてませんが、ハッピーエンド専門なので、あの憂いは出なくて💦全15話、よろしくお願いします! (2022年6月10日 22時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:7129 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=7129
作成日時:2022年5月28日 12時