また、二人で紡いで歩めたら (ページ4)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:1,618 hit

続き、その1 ページ4

それから数週間後、彼女との逢引。
路地を一本入った所にある、アンティーク調の可愛らしい喫茶店だった。
「あ、いらっしゃいAさん。もうすっかりお得意さんだね」
「マスターの紅茶が美味しいからですよ」
「いやぁ、それほどでも…あるね」
互いに顔馴染みなのか、普段よりもくだけたやり取りが繰り広げられる。
…悪戯っぽい面持ちの、男。
一瞬だけ胸に浮かんだ黒いものは、それを自覚する前に消えた。

「Aさん、今日もいつものでいい？丁度今日、新しい茶葉が入ったんだけど。どう？」
今日も、という事は、相当Aはこの場所を気に入っているのだろう。
「んー、じゃあ今日は新しいので。ウォズはどうする？」
「では、Aが言う"いつもの"を」
また一瞬、黒いものが胸に浮かんだような気がする。今度は、先程よりも僅かに存在感を増して。

「ああ、そうそう。新作のケーキがあるんだ。お二人さん、味見してくれない？」
「だって、ウォズ！ね、一緒に食べよ？」
が、Aの輝くような笑みをほんの一瞬目にするだけで、そんな物はどこかへ消え去ってしまう。
「Aがそう望むなら」

この日以降、私もこの店の常連になった。
Aと同じものを好きでいられることが、酷く幸福で、幸福で。

──ああ、独占してしまいたい。
──嫉妬。嫉妬、嫉妬。
──些かの、不安。