思い出せなくなるその日まで(yt×ym) ページ10
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白く曇った窓に人差し指で丸く円を描いた。
今日は大寒の日らしい。
冗談好きな親友から聞かされた嘘臭い話だったが、それはどうやら本当のようで。
ちらほら降る雪は街を白く染め上げる。
ふるりと震えた身体に気が付いて暖房を入れる。
ふかふかのベッドに身を沈めると、重くなる瞼に目を擦った。
白いシーツに指を這わせて、貴方の存在を確かめる。
｢寒いね｣
世界で一番大切で大事な人が居なくなっても、時間は構わず進み続けていく。
取り残された俺はそんな日々に置いていかれる。
そして、瞬きをしている間に時代はあっという間に移り変わってゆく。
｢ゆうと｣
ひらひら輝くこの雪も季節も、気が付けばもう隣にいたのに。
真っ白なベッドに転がる俺の心は冷たいまま。
そういえば、大事な事を言い忘れていたかもしれない。
俺っていつだって裕翔のこと頭の端で考えてるし、電話だって無意識のうちに掛けてるんだよ。
つまり呼吸をするのと同じように、裕翔の存在は俺にとって必要不可欠だって事。
いつもへらへらしててお調子者の貴方には伝わっていないだろうけど。
｢…でない｣
それなのに今日は俺からの電話に出てくれないの？
もしもしやま？って上擦ったその声を聞かせてくれないの？
ねぇ、裕翔。応えてよ。
｢ねえってば｣
サイドテーブルに置いてあるペアリングに手を伸ばして、左手の薬指にそっと差し込む。
まだこのひんやりとした感覚に慣れないって言ったら、貴方は笑うかな。
『いつかちゃんと薬指にはめてあげるから、それまで待ってて』
そう笑った貴方の笑顔に涙が止まらなかった。
俺が絶対幸せにするって珍しく真面目な顔してそう言うんだから、差し出されたその手を握るしかなかったじゃんか。
本当に、狡い人だった。
｢…ゆ、と｣
幸せにするって、約束したじゃん。
いつか二人だけで結婚式挙げようねって一緒に笑い合ったじゃん。
｢きいてないよ、っ｣
死ぬなんて、聞いてないよ。
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作者名：なづな | 作成日時：2021年1月17日 19時
