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｢ただいま…｣
パタンと閉まった玄関のドア。
靴を脱ごうと目線を下に下ろすと、見慣れたもう一足のスニーカーが律儀に並べて置いてあった。
ペタペタと足を鳴らしてリビングに向かうと、まるで自分の家かのようにソファにだらしなく寝そべっている彼が居た。
｢おかえり、大ちゃん｣
｢…はぁ。居るんなら連絡くらいしろよな、いのちゃん｣
｢ふふ、ごめんねー？｣
全く反省していない。
彼はテキトーだ。何もしても、どこに居ても。
でもする事はちゃんとするし、相談だってきちんと聞いてくれる。
そんな彼を知っているからこそ、俺は彼に対して甘いのかもしれない。
｢今日、大学は？｣
｢…うーん、休んできちゃった｣
｢はあ？なんでよ｣
｢だって大ちゃんに会いたくて｣
ぷくっと頬を膨らませて言ういのちゃんは、男の俺から見ても可愛い。
昔からいのちゃんは何かと狙われやすかった。
端麗なその容姿に誰もが惹き付けられて、小学生の頃に彼を初めて見た時は女の子だとも思った。
いのちゃんは俺の2つ下で、今は大学4年生。
大事な時期だって言うのに、俺に会いたいだとか変な言い訳を付けてよくこの家に来る。
まあ言い訳とか、理由とか。そんなのは要らないんだと思うけど。
｢大ちゃん、どこ行ってたの？｣
｢昔の友達んとこ。昨日偶然コンビニで会ってさ｣
｢…嘘、だって甘い匂いする。大ちゃんのじゃない。｣
｢っ、｣
｢ねえ、ほんとは？本当は、どこ行ってたの、｣
｢…、友達だよ。嘘じゃない｣
｢…本当？｣
｢ほんと。｣
｢じゃあ、キスして。
ちゃんと大ちゃんのものって分かるように｣
｢…わかった｣
潤んだ瞳で見つめてくるいのちゃんに応えるように、そっと唇を合わせる。
その時、昨日の出来事がふと頭を過ぎった。
｢っ…！｣
｢…大ちゃん？｣
｢あ、っごめ、｣
｢どしたの？何かあった？｣
｢んや、なにも…｣
｢何もない｣
本当はそんなことなんてなかった。
昨日の夜、小さな公園で感じた温もりを思い出したんだ。
ずっと好きだった彼に初めて触れた。
白くて透き通るような肌は昔から変わっていなくて、でも昔よりも綺麗だった。
儚げな瞳でこちらを覗き込むように見つめるその顔は、確かに昔から変わっていなかったけれど、大人の色気を纏っている彼にどうしても触れたくなってしまった。
｢…っん、｣
現に俺の恋人はいのちゃんだっていうのに。
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なづな(プロフ) - 雄也たんさん、ありがとうございます！初投稿なので少しおかしな所もあると思いますが、期待に応えられるように日々精進したいと思います。 (2020年9月13日 19時) (
レス) id: 508217b1b8 (このIDを非表示/違反報告)
雄也たん - 今後のうらツクも期待してます。泣けるような話も、期待してます。 (2020年9月13日 19時) (レス) id: a15daa54b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なづな | 作成日時：2020年9月13日 19時
