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小さな寝息を立てて眠る愛くるしいその寝顔。
さらりと撫でれば明るく光る茶髪はこんなに近くにあるのに。
届いているのに届かないこの焦れったさに、テーブルの下で静かに拳を握った。
｢よかったの？あんなこと言って｣
｢⋯別に、俺は。やまが幸せでいてくれたらそれでいいから｣
自分で言ってて虚しくなった。
言ったところで肯定して貰えないこの気持ちを、今更伝えようだなんて。
そんなの結局、また彼を困らせてしまうだけだ。
｢ふぅん。まあ僕には関係ないことだけど｣
そう言った小さな手は再び酒の入ったグラスに伸ばされた。
好き、だなんて。
もう子供じゃないし、別に淡い青春とか夢見てるわけじゃない。
ただ昔と変わらないこの胸の痛みは今も消えそうになくて、その上それを治す術も知らない。
大人になってもこの薄汚れた感情をひた隠しにしながら生きている日々に嫌気が差した。
｢ねぇ知念｣
｢ん？｣
｢俺はどうすればよかったのかな｣
長い睫毛が真っ白な肌に影を作る。
少しでも触れたら消えてしまいそうな、そんな彼を見つめながら答えのない答えを求める。
｢初めて会った時から気持ちの矛先は既に決まっていて、揺るがない想いに怖気づいて結局後悔してる。
⋯きっと俺、守ってあげたい人よりももっと弱いのかもしれない｣
守りたいと思ったところで行動になんか移せないし、気付いたら支えて貰っちゃってる。
そんな自分の弱さに、ビールを喉に流し込んだ。
｢⋯ゆーてぃって体は無駄にデカいくせに、心は悲しくなるくらい小さいよね｣
｢えっ｣
｢おまけに頭はいいのに考えてることはバカっぽいし、スーツも気崩さないで大人っぽくてカッコイイのに変な動きばっかするし｣
｢え、突然悪口大会？｣
｢実は結構鈍感で伝わってないことたくさんあるけどよく見捨てられなかったね｣
｢これもしかして謝る系のやつ？｣
｢だからさ｣
カタン、と雑に置かれた空のグラスがやけに大きく見えて。
その白くて小さな手はあっという間にテーブルの下に潜っていなくなった。
｢もっと周りを見渡さなきゃ、見えるもんも見えなくなっちゃうよ｣
そう吐き捨てるように言った彼は、プツンと意識が切れたようにテーブルに身を預けたままそっと目を閉じた。
見えるもんも、見えなく？
よく分からないことを言って眠りについた彼は一体何を言いたかったのだろうか。
ああ、もしかして知念が言ってた鈍感ってこの事かも。
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なづな(プロフ) - 雄也たんさん、ありがとうございます！初投稿なので少しおかしな所もあると思いますが、期待に応えられるように日々精進したいと思います。 (2020年9月13日 19時) (
レス) id: 508217b1b8 (このIDを非表示/違反報告)
雄也たん - 今後のうらツクも期待してます。泣けるような話も、期待してます。 (2020年9月13日 19時) (レス) id: a15daa54b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なづな | 作成日時：2020年9月13日 19時
