#24 ページ25
.
そういえば昔山田が言ってたな、なんて。
『俺大ちゃんの笑った顔、好きだよ』
そう言った山田の笑顔の方が眩しいような気がするけど、それでも彼奴は確かに言っていた。
『大ちゃんの笑顔が一番だ』と。
｢やっほ、大貴｣
｢知念？｣
｢へへ、来ちゃった｣
スーパーの袋を提げた知念がまるで自分家のように靴を脱ぎ捨て、｢お邪魔しまーす｣と勝手に家に上がる。
ちらりと見えたビニールから出たニラを見て、餃子かな、いやもしかしたらレバニラかも、なんて考える。
｢大貴、台所借りてもいい？｣
｢いいけど、どうしたの？｣
｢昨日言ったでしょ。餃子奢ってって｣
｢そりゃ言ってたけど、…え、なに、まさか作んの？｣
｢見りゃ分かるでしょ｣
ボウルや菜箸、フライパンなど、自分でも全く把握していなかった所から調理器具を次々取り出していく知念。
料理出来るイメージ全く無いけど…ほんとに作れんのか？こいつ。
｢なに突っ立ってんの。大貴もやるんだよ｣
｢え、俺も！？｣
｢当たり前でしょ｣
｢俺料理全然出来ないけど…、｣
｢僕もだよ｣
｢…ぇ、じゃあ何で｣
｢そういう気分だから｣
｢ほら早くひき肉取って｣と急かす知念に適当に返事をしてスーパーの袋から食材を出していく。
というか此奴、気は確かか？
本当に知念だよな？
｢な、なぁ、やっぱり食い行った方が…｣
｢僕のお金が無駄になるでしょ｣
｢でも…、｣
｢何か文句あんの｣
正直、知念に振り回されるのは慣れてたけどまさかここまでとは。
全然俺の意見聞いてくんないじゃん。
てか何で俺ん家なんだ？
疑問で頭がいっぱいになる。
すると、俺の止まった手を知念が引っ叩いた。
｢いっ、た！｣
｢ほら、つべこべ言わずにさっさと手動かす｣
上機嫌に鼻歌を歌い始めた知念は呑気にボウルの中の具材を練る。
俺はその横で渋々慣れない包丁を掴み、人生で初めてニラを刻んだ。
.
｢できたー！｣
｢ふぅ…やったな｣
｢餃子の皮包むのに手こずってた誰かさんの所為でもう夕方だよ｣
｢え、｣
マジか、と掛け時計に視線を移す。
短針はすっかり5時を示していた。
｢…さて、今日はたっくさん飲もうか｣
｢え？いいの？｣
｢何言ってんの、大貴を慰める会なんだから当たり前でしょ？｣
｢でもお前明日仕事じゃ…｣
｢あーもうほら、そんな事はいいから。座った座った｣
知念に促されるまま、俺はソファに腰掛けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 147人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「学パロ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なづな(プロフ) - 雄也たんさん、ありがとうございます！初投稿なので少しおかしな所もあると思いますが、期待に応えられるように日々精進したいと思います。 (2020年9月13日 19時) (
レス) id: 508217b1b8 (このIDを非表示/違反報告)
雄也たん - 今後のうらツクも期待してます。泣けるような話も、期待してます。 (2020年9月13日 19時) (レス) id: a15daa54b1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なづな | 作成日時：2020年9月13日 19時
