#13 ページ14
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｢大ちゃん何か飲む？｣
｢おー｣
｢じゃあちょっと待ってて｣
今日は二限からだから、と言っていつものように俺の家に来たいのちゃん。
俺はソファの上でボーッとテレビを見ていた。
｢どーぞー｣
｢さんきゅ｣
コト、とテーブルの上に置かれた、前にいのちゃんが一目惚れをして買った綺麗な青のグラスに入った麦茶。
手に取ってそれを喉に流すと、体の中の熱が冷まされていくような感覚。
小さく息を吐き、コップを置いてテレビに視線を移した。
｢…ねぇ、大ちゃん？｣
｢んー？｣
｢俺の事、好き？｣
｢…え？｣
突然の質問に驚いて左隣のいのちゃんの顔を見る。
彼の視線はテレビに向けられていて、その横顔は普段と変わらない。
｢…好き、だよ、？｣
｢………｣
｢いきなり、どしたの…？｣
そう聞くといのちゃんはゆっくりとこちらを向いて、微笑した。
目は笑っていない気がして、彼に恐怖を覚える。
｢…ふふ、なーんてね｣
｢へ、？｣
｢怯えてる大ちゃん、かーわい｣
｢っ、…はは、｣
なんだ、冗談か…
そう思って安堵したのも束の間、再びいのちゃんは変わらぬ声のトーンで続けた。
｢ただ…、今朝玄関の棚に見知らぬ鍵が置いてあったんだよねー｣
｢…！？｣
｢もしかしてあれ…大ちゃんの？｣
ゴクリと生唾を飲み込んだ。
確かに昨日の夜、疲れて山田ん家の合鍵を玄関の棚の上に置いて、そのままシャワーを浴びて寝てしまった。
まさかいのちゃんが来るとは思わなくて、今の今まですっかり忘れていた。
｢…大ちゃん？｣
｢あ、…いや、｣
｢ふふっ、今日の大ちゃん、なんかへん｣
楽しそうに笑ういのちゃんは本当にいつも通りだけど、やっぱり何処か様子が違く思えるのは、俺が歯切れの悪い返事をしてしまったからだろうか。
｢じゃ、そろそろ大学行く時間だから、もう行くね｣
｢あ、うん…行ってらっしゃい、｣
｢はいはーい。行ってきまーす｣
バタンと閉まったリビングのドア。
一気に全身の力が抜けて、ソファの背もたれに身を委ねる。
きっと山田との事、いのちゃんは気付いている。
そう思う他なかった。
いのちゃんのあの顔、あの態度。
誰よりも周りを見て行動しているいのちゃんならもう知っている筈であって、いつ別れ話を切り出されるか時間の問題だ。
窓の外は曇っていて、今の自分の気持ちのように思えて雨だけは降らないでと、心の中で唱えてゆっくりと目を閉じた。
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なづな(プロフ) - 雄也たんさん、ありがとうございます！初投稿なので少しおかしな所もあると思いますが、期待に応えられるように日々精進したいと思います。 (2020年9月13日 19時) (
レス) id: 508217b1b8 (このIDを非表示/違反報告)
雄也たん - 今後のうらツクも期待してます。泣けるような話も、期待してます。 (2020年9月13日 19時) (レス) id: a15daa54b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なづな | 作成日時：2020年9月13日 19時
