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あれから1ヶ月。
彼は悲しそうな顔1つもしなかった。
本当は誰よりも寂しいはずなのに。
｢…じゃ山田。俺もう行くから｣
｢…うん、｣
｢待って｣
そう言って彼を抱き締めることが出来たなら。
でも、俺は彼の特別な存在でもなんでもない。ただの幼馴染。
ただの幼馴染、のはずなのに。
どうして胸はこんなにもチリチリと痛むのだろう。
｢元気でね｣そんな言葉をかけてそっと背中を押すことが出来ない俺は、つくづく臆病で滑稽だ。
｢山田｣
彼が優しく囁いた。
滲む視界に映るのは、彼の眩しい笑顔。
俺の大好きな笑顔。
今日で恐らくもう二度と見ることが出来ないであろう、彼の笑顔にそっと手を伸ばす。
彼はその手を振り払わなかった。
そして嬉しそうにはにかんで、言った。
｢じゃあな｣
振り返った彼は、なんだか俺の知らない人のように見えて。
熱くなる目頭を誤魔化すように、遠ざかる彼の背中に届かないと知りつつも宙を彷徨い続ける手を再び伸ばす。
誰にも受け取って貰えない想い。
こんなにも溢れてしまいそうなのに。
この気持ちを何処に捨てろって言うの。誰に譲ればいいの。
｢…ふ、っ、｣
ああ、俺は。
｢う、っうぅ…｣
こんなにも、俺は。
｢うう、…っあ、はぁっ…、｣
彼をこんなにも離したくなくて、彼に執着して。
｢ね、え…っ、まって、よ…、｣
この恋を手放せないほど。
｢うああああぁぁぁ…っ、｣
彼を好きだったんだ。
青い夏、煩い蝉の音。
唯一の幼馴染と、実らなかった初恋は、何も知らない太陽に溶かされた。
何もかもを失った、高校2年の夏だった。
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なづな(プロフ) - 雄也たんさん、ありがとうございます！初投稿なので少しおかしな所もあると思いますが、期待に応えられるように日々精進したいと思います。 (2020年9月13日 19時) (
レス) id: 508217b1b8 (このIDを非表示/違反報告)
雄也たん - 今後のうらツクも期待してます。泣けるような話も、期待してます。 (2020年9月13日 19時) (レス) id: a15daa54b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なづな | 作成日時：2020年9月13日 19時
