【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ45)

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また、演奏を聞いた相手は移動を大幅に短縮することもできる。これによって例えチェーノから遠く離れた地にいようとも、時間をかけることなく彼の元へと辿り着く。監督生たちが己の意思に関係なくモストロ･ラウンジに来ていたのも、この現象が例に漏れず発生したからだ。

要するに、本来は対象を呼び寄せることを目的としているのだが、チェーノはそれに伴って得られる"移動の短縮化”という効果の方に着目してユニーク魔法を使用した。咄嗟ではあるが実に機転の利いた判断だったと言えよう。

アズールの解説を受けて、自分たちの身に起きた絡繰をようやく理解できた1年生達は皆多かれ少なかれ驚いているようだった。

「なんて言うか、その…ラルフィア先輩ってどこまでも音楽家なんだな」

それは彼のユニーク魔法の詳細を知ったとき、誰もが1度は抱く感想である。デュースのように言葉にするのか否かについてのみ個人差があるだけで。

「寧ろチェーノさんだからこそその程度(････)の認識で済んでいるのかもしれませんね」

そんな風に集まって話していたら、複数の声につられたのか双子も次第に合流した。何やら意味ありげな発言を残したのはジェイドだ。アズールやフロイドも静かにそれに同意している。

「どういうことですか？」

「考えてもみてください。彼は魔法で演奏を聞かせた相手を自分の元に呼び寄せることができるんです。

これを敢えて悪く言い換えるのならば、その相手はただ流れてきた音楽を少しでも聞き入れてしまっただけで、無意識を操られ自分の意思を奪われたまま彼の傍に留まらなければいけないということになりませんか？」

＿しかも彼の演奏は世界が誇る一級品、その強制力は馬鹿にならないと思いますよ。

そこまで丁寧に説明されて初めて、監督生はチェーノが持つユニーク魔法の恐ろしさを知ってしまい衝撃を受けた。

というよりは、普段の印象だけで「彼ならそんな危険なことに魔法を使う筈がない」と皆に自然と思わせていたチェーノ･ラルフィアという男自身に驚いているのかもしれない。彼とて魔法士の1人なのだから、どんな風に扱う可能性だってあると言うのに。

監督生の僅かな動揺に気付いた人魚達は少なくともそう俯瞰していた。

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