？？？？ ページ26
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"こっちにきてよ”
"ここで、いつものうたをきかせて”
"すてきなおんがくでねむりたいなぁ”
何処からともなく囁きが聞こえる。
ナイトレイブンカレッジの音楽室、何の飾りも物置もない壁際。当たり障りのなく、ただ在り来りで普通なら目にも留めないただの場所に違和感を覚えて堪らない。
この現象に何故だか既視感があった。いつもの暗い夜、なかなか寝付けないたくさんの"だれか”のために、古びたピアノを弾いて聴かせてやった記憶が蘇る。
…そう、その時もこんな風にたくさんのこえに呼ばれて、強請られていたような。
しかし、それが本当ならばおかしな話だった。だって、無くてはならないのに此処では存在していなかったはずが、あってはいけないのに存在してしまっているのだから。そんなちぐはぐなことをぼんやりと考える。
まるでその空間だけが綺麗に切り抜かれ、人の目から守られているようだった。もしもこの予感が正しいのならば、その先には必ず"なにか”がいる。自分が触れることで、きっと何かが始まってしまう。
それは最早予感などという不確定な可能性を秘めたものでなく、確信でしかなかった。
「もしかすると、"彼ら”は君を待っていたのかもしれませんねぇ」
そう暢気に笑う男が隣までやってくる。こつり、こつりと靴音を立てて、ゆっくりと。けれども此方を逃す気など更々無いのだとでも言いたげな程、鋭い眼光ととびきりの狂気を仮面の裏に潜ませていた。
「無条件で
我が校への入学に興味はありませんか、と。疑問符はない。いいえという選択肢は既に捨てられていた。こんなの、問い掛けとは言わない。
「"彼ら”のために、君にしかできないことを任せたいのです」
男はどんな手段を使ってでも彼を手元に置くに違いなかった。何せ魔法による支配が敵わない相手を、唯一懐柔し得る人材を見つけてしまったのだから。その事実への歓びを隠すことなく、ニヒルな笑みを浮かべて此方の反応を窺っていた。
「快い返事をお待ちしております。ええ、待ちますとも。
何せ私、とっても優しいので」
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"そばにきて、きかせて”
"あのうたを、きかせて”
囁きが、聞こえる。
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"どうか、おいていかないで”
ずっとずっと、聞こえている。
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作者名：YAS | 作成日時：2022年9月30日 17時
