32. ページ33
白石先生side
消灯時間をすぎた頃、緋山先生のスマホに連絡が入った。
緋山「ごめん、白石。Aが寝付けなくてぐずってるみたいなんだけど、私、今離れられないから病室にいってもらってもいい？」
ってことで。
Aの病室に入る。
『Aー？』
A「めぐちゃ…」
『おいで？』
ナースに抱かれて頬を濡らしていたAの抱っこを変わる。
看護師「すみません。なんか、寝付けないみたいで…あの、緋山先生は…？」
『いえ。緋山先生は今、患者の対応に入ってて来れなくて、私が変わりに…』
看護師「そうなんですね。ありがとうございます。」
そう言うと病室から出ていった。
『寝れないの？』
A「ん…」
Aの背中を優しく叩く。
『怖い夢でも見たの？』
そう聞くと、返事の代わりに抱きついている腕に力が入るのが分かった。
『…そっか。怖かったね。大丈夫。私がここにいるからね。』
出来るだけ優しく話しかける。
A「めぐちゃ…」
『ん？』
A「そばに…いてね…？」
『ふふ。いるよ。Aが嫌って言ってもずーっといてあげる。』
そう言うと、安心したのか規則正しい寝息が聞こえてきた。
『よいしょ…』
少しの間そのままでいて、そっとベッドへ寝かせ、布団をかける。
緋山「…寝た？」
『うん…さっき寝たばっかり…』
Aの頭を起こさない程度に撫でていると、緋山先生が入ってきた。
緋山「ごめん。ありがと。」
『うん。』
そっと緋山先生がAの近くに来れるように、ベッドの足元の方へずれる。
緋山「…三井先生がね、Aが独りぼっちで私とか両親、救命のみんなとか三井先生達が遠くへ行っちゃう夢を見たって言ってた。って教えてくれたのね。」
そう、Aの寝顔を見ながら話し始めた緋山先生の横顔はなんか寂しいような悔しいような、複雑な表情だった。
そして、外からの月の光に照らされた一筋の涙が頬を伝っている。
緋山「…っ…なんで…私じゃなくて…三井先生に…言ったのかな…っ…」
そっと緋山先生の肩をもつ。
『…たぶん。Aなりの気遣いだったのよ。きっと。』
緋山「…はぁ…っ…」
緋山先生は唇を噛み締め、上を向いていた。
気を使われて、気を使われるような存在になっていて、心の底からのわがままが言えるような存在になれなくて、私には分からないほど悔しいんだと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 716人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まちゃ(プロフ) - この小説ほんとに面白くて大好きです！！ (2018年6月16日 6時) (
レス) id: 827384ec1a (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 名取先生とかも出してほしいです (2018年2月27日 1時) (レス) id: b35bb8b960 (このIDを非表示/違反報告)
みろ(プロフ) - 智未さん» 喜んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。 (2017年11月2日 19時) (レス) id: 8819c6dc4a (このIDを非表示/違反報告)
智未(プロフ) - リクエストに応えて頂きありがとうございます！とても、面白かったです！次のお話も楽しみです！これからも頑張って下さい！応援してます！ (2017年11月2日 18時) (レス) id: c6b9284cf3 (このIDを非表示/違反報告)
みろ(プロフ) - レインさん» ありがとうございます。 (2017年11月2日 17時) (レス) id: 8819c6dc4a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みろ | 作成日時：2017年9月7日 0時
