キューピット 完

_ ページ4

〜釜爺〜



石炭が燃える音と真っ黒のスス達がコチラを見て話している声がボイラー室に響く




釜〈昔はな、赤い塔以外にも人間世界に繋がる入り口が沢山有ったんじゃ。あの頃は、今よりも、神様が沢山暮らしていて、電車も沢山通っておった。それに、ココのモノでも人間世界に行くのは自由じゃったんじゃ。〉




Aは、意外と言いたそうな顔をして、わしの話を聞いていた




釜〈しかし、その暮らしが崩れたのは、Aが来た数年前じゃ。人間の男が1人コチラの世界に迷い込んでの。〉




「やっぱり千尋の前にも湯屋に人間が来てたのか」




釜〈あの時は、得体の知れない人間を受け入れなかった。だがな、ヒトリだけ人間の肩を持ったエルという娘がおったんじゃ。その娘は、美しく、愛想も良かったから湯婆婆のお気に入りでな、誰も口出しできなくなったんじゃ〉




「今、そのエルってヒトは？」



釜〈分からんのじゃ。今どこで何をしているのかも、生きてるのかも分からん。〉




Aは、目を丸くして聞いていた




釜〈そいつは、ココに来た人間と恋に落ち黙って人間とココを出て行ったんじゃ。〉




「それじゃぁ、昨日言ってた同じ事を繰り返さないようにってどういう意味？」




釜〈…湯屋に来る神々を知っているじゃろ。人間の多くが願う事…〉




「人間の願う事？」




釜〈不死身の身体じゃ。何せ神様は、歳を取っても死なぬからな。それに、男の人間がココに居たとき一度だけ生の神が来たからの…〉




「…その人からコッチの世界の話が広まった…？」

_→←原因

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す