愛という、名もなき花。* 橙 (ページ7)

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＃７ページ7

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“ 丸山隆平様 ”

宛名書きの字を見た瞬間、彼女からだとわかった。

封筒の中身が結婚式の招待状だということも、開ける前からなんとなく察しはついていた。

それが届いた次の日、営業時間が終わった後の花屋で1人、彼女に贈るための結婚祝いをこしらえる。

綺麗なコチョウランを可愛らしいバスケットに入れ、リボンをつける。

それから宛名を書き、準備が一段落したところでふと店内を見回す。

ありとあらゆる色のアネモネが寄せ集められて植えられている鉢が目に入ってくる。

以前、僕は彼女に、アネモネは色ごとにそれぞれ違う花言葉を持っているんだということを教えた。

では、アネモネ全体でもまた花言葉があるということを彼女は知っているのだろうか。

そう、その花言葉ーーまるで、その花たちだけはこの恋の結末を知っていたかのようだった。

もう二度と、あの日々には戻ることができない。

「僕も、もう少し強くなってかなあかんなぁ……」

ゆらゆら揺れながら、そんな僕の独り言にも耳を傾けてくれるアネモネ。

僕はその鉢植えを抱えて家に帰り、それをベランダにそっと置く。

数ヶ月後にこの色とりどりの花びらが全て散ってしまう頃には、僕もきっと幸せを掴めていると信じてーー