case.52 ページ5
いつになく甘いムードを漂わせる降谷に、Aはとうとう気が触れたか、とさえ思った。
流石にAも自覚していない程馬鹿ではないので、自分が男の腕力に勝てる訳ではないとわかっているし、降谷もそれは察している筈だ。
それでも、降谷は何時までも危なっかしい彼女を放ってはおけなかった。
「…君の技量はよくわかってる。だからこそ、最初の段階でストーカーにも気付いていた筈だ。その時点で僕に助けを求めるなり…」
『そりゃまぁ…気付いてましたけど。スマホを、家に…置いてきてしまって。充電が切れてたので…』
「…君には危機感というものがないのか?」
『まぁ、大抵のことは何とかなりますし……』
その言葉に苛立った降谷は、Aの掴んでいた手首に思わず力を込めた。
『ちょ…安室さん?痛いんですけど。離してもらえます?』
「…今は安室じゃない。」
『…降谷さん。痛いです。』
「…零、だ。呼んでみろ、A。」
『はぁ!?』
意味がわからない、とでも言いたげに顔をしかめるAの頬をツゥ、と撫でて、「呼んで?A」と甘い言葉で呟いた降谷のあまりの色っぽさにAはぶわわ、と顔を赤くした。
『は?いや、何なんですか…?降谷さん、とうとう頭イカれたんですか?それともハニートラップ?残念ながら私にその手は…』
「…頭がイカれた訳でもハニートラップでもない。僕は本気だ。」
降谷の唇が、Aの額に触れ、瞼に触れ、頬に触れ、首筋に触れる。
そのまま、耳へと唇を移動させて、耳朶を甘噛みされたAは、思わず零れ掛けた声を必死に抑えた。
『ッ………私、言いましたよね?私という存在を知ることは、リスクを冒すことだって…。貴方が例えば私に好意を抱いたとして、私を傍に置くメリットなんて情報を得られるっていうこと以外ないですよ?』
「メリットとかそんなのどうだっていい。危なっかしくて見ていられないんだ。」
『降谷さ…ッん…!?』
「零、だろ?A。何回も言わせるな。」
段々と深くなる口付けに、流石にこのままでは食われる、と、そう思ったAは、口付けの合間に呟く様にその名を発した。
『ッれ…零……ッ、』
「んッ…駄目だ…煽った君が悪い」
『ンンっ…まっ、ちょっと!?』
歯止めが効かなくなった降谷にAの頭突きがお見舞いされたのはその僅か数秒後。
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q2n3qbzuWwYqZsD(プロフ) - 続き見てぇー (2022年8月5日 19時) (レス) @page22 id: c07b904298 (このIDを非表示/違反報告)
咲空(プロフ) - 氷月さん» ガイシャも被害者も同じ意味ですよ (2020年4月26日 23時) (レス) id: aaa3736e7c (このIDを非表示/違反報告)
氷月 - ガイシャではなく被害者ではないですか? (2020年4月15日 1時) (レス) id: acb67715b0 (このIDを非表示/違反報告)
椎名桃乃 - 夢主ちゃん可愛いです…!タイプです!w応援してます、頑張ってください! (2019年5月23日 16時) (レス) id: 87ecca1cfc (このIDを非表示/違反報告)
キリト - 赤井さんの名前を出した時の反応可愛い!続き読みたいです! (2019年5月2日 0時) (レス) id: 589d334356 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲空 | 作成日時:2019年2月11日 16時