にんにん。じゅうろく。 ページ17
小狐丸side
不気味な程に静かな夜だった。
その日は珍しく審神者が早々に誰に相手を頼むわけでもなく一人寝入って、久方振りの安息であった。
無理な出陣でボロボロになった彼は、遂に限界を迎えて刀の身に戻ろうとしていた。
偶々。本当に偶々。
私が通り掛かった。
小「…何をするつもりなのです。」
岩「おお、小狐丸か。なぁに、少し休むだけだ。思いの外人の身でいるのは辛くてな。休ませてくれ。」
立ってることも侭ならぬだろうに、ボロボロの体で確りと此方を向いてそう仰る。
深い悲しみに覆われる目を見て、何も言えなくなった。
それなのに彼は朗らかに笑うのだ。
辛さを隠していつも通りに振舞おうと、努めるのだ。
岩「がっはっは、そう、悲痛な顔をするでない、小狐丸。俺は人の身に戻るかどうか分からぬ……いや、戻れないかも知れん。だから今剣を頼んだぞ。」
そう言って次の瞬間、彼はありのままの姿に戻っていた。
その身は変わらず、廃れたままだった。
私は自分の不甲斐なさに唇を噛み締めた。
何故じゃ。
何故私達がこんな目に。
人間の都合で与えられた人の身。
それを欲望のままに利用する己の主だと語る者。
私達は一生あの審神者が死ぬまで縛り付けられる運命なのかと。
やっと審神者が居なくなっても彼は戻らなかった。
その内、数日経てば新しい審神者が来た。
小柄で華奢な印象を抱いた彼女は、忍一族___不知火の末裔だと語る。
何時かのあの声が蘇った。
“__小狐。小狐丸よ。美しく素晴らしい刀だ。お前を手にした主人は幸せ者だな。”
人の身を得ていない時代、刀の身で受けた優しく温かい声。
不知火の忍だと語ったあの者の声と重なった。
『小狐丸。私を信用しなくてもいい。納得出来ないのであれば何時でも相手になろう。だがな。人を認めることも時には強さだぞ。人間は愚かだが、同じ人間などいない。岩融もそれがわかっているからお前に後を託したのではないか。のう、岩融よ。』
その言葉に振るっていた刀をピタリと止めた。
否、正確には__止められた。
薙刀を刀身とする彼に。
岩「小狐丸__もういい。だから…刀を降ろしてくれ、小狐丸。」
その日、久方振りに彼の人の身を見た。
小狐丸side END
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ミリア - 凄く面白かったです。気に入った作品です。今後他の作品を作る予定があったら刀剣乱舞とコラボかトリップか転生したリボーンかKアニメかワールドトリガーかワンピースかナルトの作品が読んで見たいです。説明が下手ならすみません。これからも更新頑張ってください。 (2018年6月11日 13時) (
レス) id: 673ec4ec31 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜 - 辛いもの推しの夢主に吹きました(笑)面白いです！早く続きが読みたいです！！更新、頑張って下さい！！！！！！ (2018年5月22日 11時) (レス) id: 625c8539c6 (このIDを非表示/違反報告)
弥勒 - 何か凄い人が主とは(驚)鶴さんじゃないけど驚いた(笑) (2017年10月18日 13時) (レス) id: 24182f5998 (このIDを非表示/違反報告)
水面 - 面白いです！更新頑張ってください！ (2017年8月24日 0時) (レス) id: c4fe34a3f9 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ - 最近は、忍者が流行っているんですかね、笑笑、これに似た作品が笑笑 (2017年8月14日 16時) (レス) id: bb4d8f0296 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲空 | 作成日時：2017年2月8日 8時
