本よりも貴方が好きで。『em』

episode3 ページ3

な、なんだよ｢教えてください！｣って！もう！おかしいじゃんどう考えても！本を教えてくださいって何？！
意味わからなすぎる！
私自分のこと、ここまでアホとは思って無かった。
アホな子じゃん、ほんと恥ずかしい。
構いませんって言ってたけど絶対気、使わせてるよ。
どうしよ…いっそ来週は行かない方がいいのかな。
いやでも、話せるし……。
話したいし……。

…こんな不純な動機でいいのかな。
エーミールは多分真剣に…。


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1ヶ月、毎週図書室に通っている女の子がいる。
毎週、いや毎日なのかもしれないがきっかり開室後、5分に来て閉室5分前に本を借りて帰る。
その間の小一時間、難しそうな顔して『人間失格』を読んでいる。
時々もやもやした様子でスマホを弄ってスッキリした顔でまた本を読み始める。

毎週毎週、本を貸す時にのみ交わせる会話。
それは週一の一番の楽しみ、至福の時間となっていた。
ただ名前と借りたい本の要求番号(※本の管理番号、貸し借りの際に使う学校が多い)を聞いて用紙に控える。
ただそれだけなのだが、あの透き通る可愛らしい声。その声を聞くだけで私は幸せだ。

で、今日はボーッとしていた。
そして、何故か話しかけてしまった。
『太宰治お好きなんですか？』
なんだよそれ。
普通1ヶ月も借りてる『人間失格』が好きなんじゃないのかよ。
おかしいやろ。
しかも彼女、内容が理解出来ず借りているだけらしかった。
なんか、すみません。
で、脳内で反省会してたら気づいたら来週、彼女に小説を教えることになっていた。
もう脳内はパニック。
というか彼女もこんな下心丸出しの人間に何を教わろうと？
私は貴女と居られれば程度でお受けしましたよ？！
はぁ…い、いっそ来週は行かずに……委員会はサボるわけにはいかないか。
腹を、括るか……。


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