海賊の妹は正義を掲げた (ページ32)

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黒翅ページ32

一ヶ月ぶりにセンゴクさんの部屋の扉を叩く

______ｺﾝｺﾝｺﾝ

センゴク「入れ」

「失礼します」

おお、なんかちょっとガチっぽい雰囲気だぞ
真面目になにかやらかしたっけ

セ「…A。」

「………はい。」

セ「お前は剣術の能力に非常に長けているようだな。」

…褒められた？

「…ありがとうございます？」

セ「ああ、それを見込んでお前に渡したい物がある。これだ。」

私の前に置かれたのは、黒くて細い、本当に細くて折れてしまいそうなほど薄い剣

セ「この剣の名前は"黒翅"という。優秀な剣なんだが…少々扱いづらくてな、誰も扱えるものがおらん。A、お前、この剣を使いこなせるか。」

私は剣を手に取った
2㎝程しかない剣の幅、それに対して長さは普通の剣程もある
目の前に持ってくると、後ろの光が透けてくるようだった。それほどに、薄い
儚く見えるが、その奥にひどく鋭利なものを感じた

「……綺麗」

無意識に呟いていた
それほどに美しかった
吸い込まれ、剣と一つになるような感覚

「センゴクさん、私、…この剣が欲しいです。必ず使いこなして見せます。」

そう、答えていた

セ「そうか。なら、お前に託そう。」

私は急に手に入ったあまりに綺麗な剣にかなりはしゃいでいた

「うわああ、やった…！」

セ「あ、A。その剣を使うときは必ず特殊演習場で、周りに人がいないことを確認してから練習しろよ。これは絶対だ。」

「はーい！ありがとうございます！！」

_____だからセンゴクさんのあの言葉の意味を、深く考えてはいなかった
……そう、考えていなかったのだ

「なんっじゃこりゃ！！！」

私は今特殊演習場にいる
そして貰った"黒翅"で「藁の束」を斬ろうとした
もちろん束だけを斬るつもりで軽く振るった
うん、絶対加減した
なのに！！

私の目には深く斬撃の刻まれた壁が映っている
特殊演習場はたしか能力者が全力で戦っても壊れないように出来ていたはずだ
この剣は…

「やばすぎる」

思い通りにまったく斬れない
どうやっても斬撃の規模が大きくなってしまう

ガ「ぶあっはっはっは！やっとるのう、A」

「じいちゃん！」

ガ「その剣は曲者じゃろう？今まで何人も挑戦した奴を見たが、大体がそうなって、扱えなくて諦めるんじゃ。お前はどうするんじゃ？」

じいちゃんが挑発するように笑う

優れた剣は、持ち主を選ぶという

「絶っ対に扱って、みせる」

私の闘志に火がついた