あかねいろ。37 ページ38
予想通り人っ子一人いなくて安心した校舎裏。
ちょうどいい階段を見つけて、腰掛ける。
「“紅”の家」
「“紅”の個性」
さっきの騎馬戦中に聞こえた、その言葉が脳内でリフレインする。
“紅”の家。
超常発生以来から続く名家。
本来なら遺伝で発生する個性が、親と子で全く別のものにすり変わる場合が非常に多いと言われる唯一無二の家系。
そしてその個性はどれも強力。だからこそ、その大多数はヒーローとなり、日本の平和を支えてきた。
それ故に排他的な思考が目立ち、所謂人間のクズが多くなってしまった、哀れな家。
『...家柄で人を見るなってんだ、クソが』
私に母さんはいない。父親もいない。
物心ついた時から父親は側にいなかった。言わずもがな離婚だ。
どうしようもないクズ野郎だったらしいから、気にもとめたことはないが。
母さんは私が14の時に亡くなった。原因は、過労とストレス。
私と兄さんを育てるために女1人で頑張り続けた母は、娘を娘とも思わぬ祖母のせいで死んだ。
“紅”の家柄出身だったのは母だ。だから私と兄さんは半分しか血を継いでいない。
だからなのだろう、兄さんにだけ『赤雷』が発現し、私には『修復』なんて個性が備わったのは。
...いくら不死身だと言えど、誰も救えないのなら意味などないのに。
頭に、もう掠れてしまって思い出せない朧気な記憶が蘇る。
“A、お前やっぱりヒーローに向いてるよ！”
木霊する、懐かしい声。
人の記憶は、まず声から消えていくと言うけれど。私の場合は逆だったみたいだ。
『蒼...』
もうこの世にはいない、かつて恋をした少年の名前を呟いた。
名前を呼んだところで、彼が帰ってくるはずもないのに。
私が死なせてしまった彼が、戻ってくるはずもないのに。
『...っ』
もう嫌だ。不死身だと言うのに案じられるこの身が。
私が死なないと分かっていても、手を伸ばした彼。
それこそが彼の、ヒーローの本質なのだろう。
ならばそんなものは備わっていなくてよかった。
見捨ててくれれば良かったんだ。
顔を覆って嗚咽を零していると、不意に目の前に影が差した。
「...んなとこで何してんだ、地味女」
『ばくごう、さん』
目の前に立つ彼の赤い目と、いつか焦がれた少年の青い目。
正反対の色彩の瞳が、どこか被って見えた。
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しろくろ(プロフ) - 雛菊さん» あうう温かいコメントありがとうございます(´；ω；`)更新頑張ります…！！！ (2018年1月23日 14時) (
レス) id: 7151ac0448 (このIDを非表示/違反報告)
雛菊(プロフ) - とても読みやすくて、素敵な内容だと思います！これからの展開に期待大！です！更新楽しみに待ってます。 (2018年1月23日 14時) (レス) id: bce29b35fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろくろ | 作成日時：2018年1月23日 14時
