3 ページ3
「そうそう、明日は佐久間が来れそうだって」
「佐久間〜？？もうあいつ出禁にしろ！アニメばっか見せやがって…」
「ふふ、いいじゃん。佐久間なりに頑張ってんだよ？翔太を退屈にさせないようにー！！って」
「皆翔太の事が大好きなんだよ」
「……お前は？」
「…俺も好きだよ」
｢っ、じゃあさ、」
言いかけた言葉を飲み込む翔太
きっとまたお得意の「なんでもない」
「ごめん、なんでもない」
「…そっか」
「お前早く他に好きな人作れよ」
「え？」
「余命あるやつと付き合っててもしんどいだろ。どうせもう少しで俺は死ぬし、残りの時間でお前になんにもしてやれない」
「翔太以上に好きな人なんて今更作れないよ。何年一緒にいて付き合ってると思ってんの…それにしんどくないよ。前と変わらず俺はしあわせだから」
「…あっそ」
顔を逸らし耳と頬を赤くする翔太に思わず笑みが零れた。
「っおま何笑ってんだよ！」
「ん？可愛いなと思って」
「うるせぇ！」
「はいはい、病院ではお静かに」
ずっとこんな日が続けばいいのに。
そう思った
.
入院してから数ヶ月
「なぁ」
「ん？」
傍の椅子に腰かけ読書をする阿部に話しかけた
「…涼太に、もう来なくていいって伝えてくんね？」
「え、な、んで…」
「別に。あいつに会いたくないだけ」
欠かさず必ずどこかで俺の様子を見に来る涼太
「だてさんこの前5分休憩って時にも寝てて」
「いやー涼太が最近ずっと眠そうでさ｣
「だてさんが…」「涼太が…」
みんな口を揃えて言う
「涼太が、だてさんが」って
余命ある恋人に毎日会いに来る意味ってなに？
涼太が毎日会いに来ても俺はなんにもしてあげられない。
俺があいつの時間を縛ってる。
もっと他に良い奴だっている。男にしろ女にしろ
「っ、でも、だてさん翔太のとこに行くんだって毎日楽しそうにしてて…」
「……いいよ、阿部もみんなも。もう来なくて」
「…なんで？」
「もうお前らに会いたくない」
俺が抜けても変わらずの活躍のみんなを見てると
最初から俺はいてもいなくても良かった存在なんだってそう思わされる
つか、現にそう
みんなに会う度、自分がどんどん……惨めになっていく
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 206人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆい | 作成日時：2023年1月30日 13時
