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「今日はもう帰った方がいいよ。服濡れてるし…」
『俺は、』
「ん?」
『俺はどうしたらいい…』
「ど、どうしたらいいって、何が?」
『……ごめん、今日は帰る。また、くる』
いつもとは明らかに違うその姿は
熱からくるものなんかじゃないと思った。
悲しげで、儚げで、私の前からいなくなっちゃう
ただの被害妄想だと笑われるかもしれないけどそう思ってしまうほど今の雄登はおかしかった。
これ以上何かを言葉にするのは怖くて、、
「待って」
今にも立ち上がりそうだった雄登の背中に抱きついた
服が濡れてるだとかそんなことはどうでもいい
ここに雄登がいるという実感がほしかった
その温もりを確かめたかった。
「やっぱり、もうちょっと、ここにいて…ほしい」
『…』
雄登は口を開くことはなかったけど、上げかけた腰をもう一度下ろしたから
私はそれを肯定していると捉えた。
どのぐらいの間そうしていたか分からない。
5分だと言われればそうかなと思うし、
10分だと言われればそんな気もする。
「ごめん。引き止めちゃって」
さっきよりも幾分上がったように感じる雄登の体温にふと冷静さを取り戻した。
一方的に抱きしめていた私の腕を離し
もう行っていいよと示すようにしと背中を一つ、ポンと叩いた。
『…色々とごめん、また来るから』
「あっ、もし具合が悪くて帰れないなら下の内科とかで診てもらった方がいいと思う、」
『、、ううん、大丈夫、じゃあ』
最後まで私の不安が拭われることはなかった。
あの後電話をしようかと何度も携帯をつけてみたけど結局できなくて、。
もしかしたらもう私に会いに来ることがないんじゃないか、そう思ったりもした。
だけどあれから3日経った頃に再び病室に姿を現した雄登。
この前のことがなかったかのように、
嘘だったかのように、
いつも通りの雄登だった。
ううん、むしろいつもより優しかった。
拍子抜けしてしまったけど、もしかしたらこのあいだ雄登がおかしかったのはやっぱり熱のせいなんだって思うことにして何も言わなかった。
都合のいい解釈だと自分でも思うけど、雄登が何も言わないなら このあいだの事には触れないでほしいと思ってるんじゃないかって、思うから。
雄登だけじゃない、" れん "もあの日不機嫌になったことがなかったかのようにいつも通り私に会いにきた__
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作者名:りと。 | 作成日時:2018年5月16日 1時