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_Ren_



初めてその女を見たのは病院の廊下だった。

見たといってもたった " 一瞬 " 車椅子に乗った女とすれ違っただけ。

多分相手は俺なんかには気付いていなかった。

車椅子を押している男に時折振り返って喋っていたから。

その女と男は側からみたら、仲のいいカップルに見えたと思う。

でも俺にはそうは思えなかった。



__俺はその女が悲しい笑い方をする奴だと思った。



それから、何となくあの女のことが頭から離れなかった。

どうしてなのかは分からないけど、気がつくと考えていた。

そしてもう一度女を見かけたのは、骨折をした左足のリハビリをしている時

声をかけようかと思ったけど、ちょうど俺とは入れ違いのタイミングだったらしく、すぐにその場からいなくなってしまった。

だからなんとなくリハビリの先生に聞いてみた



「今そこにいた人、俺と同じ感じで骨折とかなんですか?」



聞けば あぁ、あの子ねとちゃんと伝わった。



「あの子はね、大きい事故に遭って右足が麻痺しちゃって動かないのよ、でもねぇ、麻痺っていっても全く動かない望みがないわけじゃないの、だけどね、なかなか上手くはいかないものね。あの子も頑張ってるから心が折れないか心配してるのよ、みんな。」

「そうなんすね、」



言いながら以前見た悲しい笑い方っていうのはこういうところから来るのかと、漠然と考えたりした。

でもどうやらそうじゃないのに気付いてしまったのは2日後


__夜の23時近い時間だったろうか


どうにも喉が乾いてしまったおれは自販機へと向かった。

その自販機にはすでに人が立っていて、見る限りは女らしかった。

その脇には車椅子が置いてあったけど、
その人はしっかりと自分の足で立ち何を選ぼうかと悩んでいる風で、

いつもなら特に気にすることもなく近づいていってたと思う、

だけどそうできなかったのは気付いてしまったから

右足の動かない あの子だと。

最初はその足が動くようになったのかと思った。

でもあれからたった2日しか経っていないのにあんなにやすやすと動けるようになるもんだろうか、

何となく俺はその場から足を引き返した。

○→←○



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作者名:りと。 | 作成日時:2018年5月16日 1時

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