十七滴 ページ18
過去に狐柚村には多くはないが
それなりに人のいた村だった
灰の家族ももちろん狐柚村に住んでいた
村人みんな仲が良く、よく皆で寝食いをしたりするほどに
しかし、それはある日を境になくなった
戦が近くで起きており、その戦にまきこまれたのだ
田畑はあれ、家は燃やされ、食べ物は奪われ
金目のものも取られ、人を殺した
灰は家族が必死に守った子であった
父は中に残った母を助けに火の海へ
兄と姉は灰を守るため囮に
灰は逃げる村のひとりに抱えられ、泣き叫んでも止まらぬ
家族をずっと目で見ていた
唯一持たされたきつね色の布を持って
例え目の前で火の家が壊れても
兄と姉が目の前で殺されても
目を閉じることはなかった
いや、出来なかった
途中に抱えていた村人が殺され、
逃げろと叫ばれ、必死に逃げた
逃げきれたが、5歳の子供には何にもできない
食うには盗みを犯すしか無かった
盗めば殴られ、存在しては蹴られ
忍術学園に入学する費用も自分で
忍術学園にいるための費用も自分で
全て1人で稼いでいる
誰も知らない故に
ずっと独りなのである
そんな子が同じ戦災孤児でも
帰る家があり
バイトを手伝ってくれる同級生、先輩、先生
これだけでも十分羨ましいだろう
バイト先にはきり丸の名前がよく聞こえ
バイトではあまり雇って貰えず
バイト先を一生懸命探す日々
見つからなければ
“からだ”を差し出すしかない
灰は生きるため、費用を払うためなら
何でもしているのに
それなのに
それなのに
かれはずっとひとりだ
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作者名:柚 | 作成日時:2023年9月2日 16時