二等賞 ページ37
「ふぅ〜〜〜〜〜！！！！ 」
滑り台の傾斜はかなり急で、一度滑り出したら止まれないほどに加速して、私はみるみる降下していく。けれど気分は反対に上昇している。最高。嬉しくなって声をあげてしまうくらい。
壁に開いた無数の小さい穴からわずかに入ってくる、小さな光がちかちかと星のように光る。
まるで宇宙空間みたい。重力を感じない。両手をめいいっぱい広げてもいい。気持ちいいなぁ。ずっとこうしていたい。いや、それは後で嫌になるかもしれないけど。でもこれ、なんだか時空を移動しているみたいで不思議。悪党のくせにロマンチックなこと言うなよって、いいじゃないか別に。誰にも迷惑かけないんだし。
あ、目の前が眩しくなってきた。きっと出口だ。
「とうちゃーく！」
スルスル、と滑り台が終わって終着点の地面に足をつける。瞬間、くらっと目眩がする。いきなり立ったから頭が混乱したのかな。
とりあえずまだ奥があるみたいだし、進もう。
『18番A、三次試験通過第２号。所要時間、7時間37分！』
変な声がゴールでそう告げる。もう終わりか…まだ不完全燃焼感があるけど、まぁ、滑り台は良かった。
でもやっぱり、ヒソカの方が到着が早いってことは私の道より簡単だったってことかな。
「やぁ、遅かったね♦」
ヒソカと目が合うとにっこり微笑まれた。私も真似するように同じ微笑みを浮かべ、ヒソカの隣に2mほど距離をあけて座る。背中を預けた壁はひんやり冷たい。
「うん、一時間も無駄に歩かされたよ。君の方はどうだった？」
ヒソカに話を振るがてら、２秒だけ表情をみてから視線を元に戻す。変わりのない奇妙な顔だった。
「ん〜…簡単だったよ♥持て余してるくらい♠」
そうして彼はまた、挑戦的な態度を取る。一時間前の私なら、この喧嘩を買っていただろう。
けれど今は神秘に触れた後だから、どうにも落ち着いている。頭の中がアフタヌーンティー真っ最中の育ちの良い女の子みたくロマンチックに溢れていて、それを端で見ている女給のように鋭くて冷静。
考えてみれば、ヒソカの態度は最初からどうもおかしい。まるで私がただの小娘じゃなことを知っているようだった。いや、知っていたに違いない。だから近付いてきたんだ。
きっとパートナーになったのもわざと。私が何処の隠し扉に落ちるか確認してから、その近くをわざと選んで落ちてきた。神様のトリックはヒソカの思惑に過ぎなかったのかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナツメ(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます！奈乃さんからのお言葉を励みに頑張ります！ (2017年8月21日 18時) (
レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
奈乃(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2017年8月21日 18時) (レス) id: 26a98954d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナツメ | 作成日時：2017年8月2日 12時
