悪党には似合わない ページ4
それから小一時間ほどおしゃべりをして、お互いに充分な情報交換ができたと思っていたころ、きらきらと西の空に明るく輝く金星が窓に光を射し込んでいた。
シャルナーク「宵の明星ってやつだね」
シャルは窓の外を見つめながら優しく言った。
「綺麗だと思う？」
景色が綺麗で和むなんて、悪党には似合わないよと誰かに言われる気がして、だから、ちょっと強がってみる。
シャルナーク「それはわからないな、もっと近くで見ないと」
「あはは、面白いことを言うね」
金星は太陽に二番目に近い星だ。近くで目を凝らしたりなんかすると、くらくら目眩がするにちがいない。
シャルナーク「あ、今日はじめて笑ったんじゃない？」
いつの間にか窓に向けてた視線は私の方に向いていた。
「そうかなぁ、中華料理の話をしたときも、笑った気がする」
シャルナーク「あれ、そうだっけ」
私が適当に言うと、シャルも適当に笑った。
「じゃあそろそろ、夕飯の時間だしお開きにしよっか」
シャルナーク「うん、仕方ないね」
伝票を持って立ち上がると、同じように立ち上がったシャルに伝票を取り上げられる。
「シャル！」
彼はさっさとお会計を済ませて、私の腕を引っ張って店の外まで出た。外はすっかり日が落ちて、薄暗い雲の下に隠れるように、シャルは私の手を握っている。
シャルナーク「ねぇ、アジトに帰ってきなよ」
思いがけない言葉にちょっと驚いて、返事を考える。
「アジトは、私がいないとつまらない？」
シャルナーク「そうじゃないけど、Aが居たほうが楽しい。Aもみんなと居たほうが楽しいと思わない？」
「そうだね、絶対その方が楽しい。でもこれから用事があるから、しばらく帰れない。用事が済んだらアジトにも顔を出すよ」
シャルナーク「団長の仕事？」
「違うよ。ハンター証、取ろうと思って」
シャルナーク「そっか………Aなら余裕だよ！」
「ありがとう、帰るときは連絡するから」
シャルナーク「うん。気を付けてね」
シャルの手が離れて、頭の上にポン、と置かれた。
シャルナーク「あ、忘れてた。団長から、8月30日正午までに暇なやつはヨークシンシティに集合、だってさ」
暇なやつ？
「あー。了解」
暗黙の強制、だな。
シャルナーク「うん、じゃあね」
別に永遠の別れでもないのに、シャルは寂しそうにする。その姿はまるで
「子犬だ」
シャルナーク「何だって？」
「あはは、じゃあまたね」
シャルの視線を背負いながら、薄暗い雲の下の帰り道を歩いた。
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ナツメ(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます！奈乃さんからのお言葉を励みに頑張ります！ (2017年8月21日 18時) (
レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
奈乃(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2017年8月21日 18時) (レス) id: 26a98954d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツメ | 作成日時：2017年8月2日 12時
