私が持っていないもの ページ12
お喋りを時々交えながら三人で走ること数時間、地下道から地上へ延びる階段の中央付近に差し掛かる。
ゴン「いつの間にか一番前に来ちゃったね」
試験官はすぐ前を歩いている。きっとゴンが持つ釣り竿を一振りすれば試験官に当たる距離。
キルア「うん、だってペース遅いんだもん」
さっきから少し汗をかきはじめたゴンとは違い、キルアはスイスイと余裕綽々といった表情で走っている。
キルア「こんなんじゃ逆に疲れちゃうよなー」
私とキルアは同じ事を考えていた。
キルア「結構ハンター試験も楽勝かもな。つまんねーの」
「あははっ」
キルア「何だよ」
黙っていた私が急に笑うとキルアはびっくりしてこちらを向いた。
「いや、ごめん。別にキルアを笑ったわけじゃない、つまんねーって言うキルアが、面白くて」
キルア「それ結局俺のこと笑ってんじゃねーか」
眉をしかめた怒り顔。言葉って難しいな、心が物になってくれればいいのに。
ゴン「キルアはなんでハンターになりたいの？」
ゴンは一途で一生懸命だから、ハンター試験を「つまんねー」と言った自信満々で余裕のキルアを疑問に思ったのもおかしくない。キルアは怒り顔を元に戻して答えた。
キルア「オレ？別にハンターになんかなりたくないよ。ものすごい難関だって言われてるから面白そうだと思っただけさ」
まぁ、受験者の中にはそういう人もいる。
キルア「でも拍子抜けだな」
そんなキルアに文句も言わず、ただ純粋でいいやつなゴンはキルアを見ているだけだった。
キルア「ゴンは？」
そうだ。キルアはさておき、ゴンみたいなのは普通はこんなとこにいるはずがない。何か興味深い理由がそこにあるのだろう。
ゴン「オレの親父がハンターをやっているんだ。親父みたいなハンターになるのが目標だよ」
家族か。
キルア「どんなハンター？親父って」
もし、私に家族がいたら今頃どうなっていただろう。ゴンみたいな家族を目標として頑張るいいこに育ったかもしれないし、キルアみたいな優秀で頭のいいこになっていたかもしれない。
私はいつだって自分が持っていないものが欲しいから、家族とか、そういうものに憧れている。
でもお宝と違って家族は人から奪えない。奪ったとしても、それは私の家族ではない偽の家族。イミテーションだ。だから、結局手に入らない“家族”はもう諦めた。
そもそも悪党の私が手を伸ばしてはいけない世界だったのだ。家族とは、きっと一番暖かい。そんな場所で冷たい心なんて生まれなかったはずだから。
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ナツメ(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます！奈乃さんからのお言葉を励みに頑張ります！ (2017年8月21日 18時) (
レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
奈乃(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2017年8月21日 18時) (レス) id: 26a98954d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツメ | 作成日時：2017年8月2日 12時
