日常 ページ1
「――、――！」
だれかが私を揺さぶっている。だれだろう。
私、まだ眠いのに。
「――、――！」
私、まだ、寝ていたいの。だから起こさないでちょうだい。
「――ス、アリス！」
――だけど、それでも声は私を呼ぶから。
だから私はそっと瞼を開いた。
するとそこには、猫の耳を着けた、紫色の髪の男の子がいた。
「アリス、おはよう！」
「――おはよう、チャシャ」
チャシャは、髪の毛と同じ色のしっぽを嬉しそうにブンブンと振ると、私に抱きついてきた。
「ああ、アリス！ なんてかわいいんだ！ 君はいつ見てもかわいいけど、寝起きの姿は特にかわいいよ！ ……食べちゃいたいくらいに」
「あら、それは困るわチャシャ」
チャシャのくりくりとした鳶色の瞳が私を見つめる。
「大丈夫だよ、ボクはアリスが望まないことはしないからね。それはアリスだって知っているでしょ？」
「ふふ、そうね、チャシャ」
チャシャはいつだって優しい。他の人には意地悪だけど、私だけには優しいのだ。何故かは知らない。知らない。でも何故なんだろう。知らないはずなのに何故か知っているような気がする。いいえ、それはおかしいわ。だって私は知らないのだから。知っている気がするなんてそんなのおかしい。でも何故かしら。こんな、
「――アリス。こわいかおをしている。どうかしたの？」
「え？ ううん、なんでもないわ。至って正常で、大丈夫よ」
「そうか、それならいいんだ」
チャシャはふわりと微笑むと一層強く、私を抱きしめた。
「なにかあったら必ずボクに言うんだよ。ボクは――ボクは絶対に、アリスの味方なんだから」
「もちろんよ、チャシャ」
強くうなずくと、チャシャは満足そうに笑った。
「それでね。今日のことなんだけど――」
――ああ、今日も。
今日も騒がしくとも楽しい、いとおしい日常がはじまる。
――そう、私は思っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
群青ノエル(プロフ) - ゆずりはさん» コメントありがとうございます！面白そうといって頂きとても嬉しいです。更新は遅くなると思いますが、じっくりお付き合いいただければ幸いですm(_ _)m (2016年11月6日 19時) (
レス) id: 9efafdeb89 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 初コメ失礼致します;; ちょっとダークな感じで面白そうだなと思いました！ (これからどうなっていくのか気になります！) 影ながら応援させて頂きます…！ (2016年11月6日 18時) (レス) id: 3389e8493f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：群青ノエル | 作成日時：2016年11月6日 17時
