三限 ページ10
「三限からはちゃんと出るんだぞ！」
天哉はわたしにそう言い残し、隣の教室に戻って行った。通行人にジロジロと見られるが、きっと自意識過剰では無いだろう。「学校、来たんだ」というセリフから察するに、多分Aは学校を長らく休んでいたのだろう。
冷静に考えて、現状解決すべき問題は、いじめにどう対処するか。そして、卒業するための出席日数は取れているのかどうか、という問題だ。
前者は今考える問題ではないとして、後者について考える。この場合、大抵担任の先生に相談すれば良いのだろうが、心になにかが突っかかってモヤモヤする。
──もしかしたら、担任の先生も味方ではないのかもしれない。
考えている後ろでチャイムが軽快に鳴る。気がつけば周りにいた学生はみんな教室に戻っているようだった。
わたしの記憶によると、次の授業は国語。
わたしの得意科目だ。
わたしは後ろのドアから教室へ入った。クラス人数は大体25人。少なめな構成だと感じた。クラスの特徴として、エリート学校だからだろうか、身なりが整っていて、品格漂う学生が多かった。しかし、そんな表面上の美しさとは裏傍に嫌な視線をほぼ全員から感じる。
教室前方にポッカリ空いた席があった。紙が1枚置かれており、そこがわたしの席なのだと把握する。
まわりの視線を跳ね返すようにわたしは堂々と自分の席まで早足で向かう。
向かった先の席に置かれていた紙はくだらないいじめの1個にすぎなかった。
わたしは紙を手に取り、心の中で読み上げる。
『早く帰れ』『学校へ来るな』『聡明中の恥晒し』『バカ』『低脳』『ブス』
わたしが紙を拾い上げたと同時に後方の席からクスクスと笑い声が聞こえる。
──自分の心は制御しないと。
そう思いながらもわたしは前世のわたしと同じ行動と取ってしまうのだろう。
わたしは、紙を見つめ、書いてある内容に大きく鼻で笑うと、クスクス笑っていた人を横目で一瞥し、紙をビリビリに破く。
前世のわたしだったらここで「こんなことしてるお前ら、超ダサくね？直接来いよ」とか言って喧嘩を吹っかけてしまうところではあるが、さすがにそれは抑えて席に着く。
ちょうどそのタイミングで先生が教室に入ってきた。
「はい授業やるよー……って、珍しいな、夜木、来たのか。受験戦争の第一敗北者かと思っていたよ。」
その先生の言葉を聞き、クラスにドッと笑い声が響く。
なるほどね。これは確かにしんどいな。
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作者名：宮 | 作成日時：2020年8月3日 2時
