追い詰めたもの ページ3
自分の名前と死因もわかった。後知りたい情報は自分の個性と、母親が何をこの子に期待しているのか、そしてこの子は本当はどうやって生きたかったか、である。
この世界から考えると、轟焦凍のように、個性婚からなるトラブル──例えばヒーローになることを強要されている、といったことがあげられる。となると、この子の両親はプロヒーロー、ということになるが、そういった雰囲気は感じない。
「だがまぁ、大体当たってるだろ、めんどくせぇ」
ため息をつきながら部屋の物色を続ける。個性のことなら作文とかの例題になりそうではあるが、この部屋からテストの結果というものが見つかりそうになかった。
「テストの答案用紙がないなんて中学生いんのか？」
私は苦笑しながらふとゴミ箱に目をやる。
「あー、捨てた、とか？」
綺麗な字を書き、綺麗な部屋に住んでいる真面目な印象な少女が答案用紙をゴミ箱に捨てるなんてことは思わなかったが、過去の私なら、つまらない答案用紙なんてすぐゴミ箱に捨てていた。だからゴミ箱を漁った。
そして、ゴミ箱の中に成績個票を見つけた。
「ハハ、全教科赤点、しかも、全部1桁！天才かよ」
全教科赤点、それは確かにヒーローにはなれないかもしれない。それで命を投げた？そういうことなのだろうか、何故かピンと来ない。心に蟠りを感じたまま次は机の引き出しを物色する。窓の外はオレンジ色に染まりつつあり、一日の終わりを告げているようだった。
「やべぇ、遂に母親と対面か〜？」
そんなことを言いながら目に付いたノートを広げた。それは英語の勉強ノートのようで、教科書の文を丸々綺麗に模写したようなノートだった。色ペンを使い分け、イラストまで丁寧に再現されていた。そういったノートが5冊ほど、あった。
決して努力していないわけではない。むしろ、常人よりは努力していたのだろう。その証にノートの最後に先生と思われる人物から「クラスで1番頑張っています」とコメントを書かれている。
「……この勉強法じゃ、1桁だよな。」
それにしても1桁というのはむしろ才能と呼べるべき頭脳だとは思うが、もしかして頭がずっと痛いのは頭が悪いのに様々なことを考えているからなのだろうか。そんなことを考えながら次のノートに手を伸ばした時、とある紙が目に入った。
「進路希望届……」
くしゃくしゃにされたその紙に書かれている文字は意外なものだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：宮 | 作成日時：2020年8月3日 2時
